きっと康夫さんに甘えているのだろう。実際、康夫さんは毎年の記念日には邦子さんに宝石を贈り、結婚10周年を迎える今年は1カラットのダイヤモンドを奮発してくれたという。たまらずに邦子さんがしゃべり始めた。
「主人は『釣った魚にもエサをやる』タイプ。嬉しいです……。子どもができればいいなと思っていましたが、この年齢ではもう難しそうなので、2人でゆっくりと暮らしていけたらと思っています」
介護生活に備えて体力をつけておかなければ、と笑う邦子さん。最愛の夫と両親に囲まれた温泉旅行を楽しんでほしい。
歳の差32歳の夫婦の場合
同じく年の差婚でも、大橋夫妻とはまったく異なる状況にあるのが、関西在住のミュージシャンである中野和彦さん(仮名、69歳)と亜紀さん(仮名、37歳)だ。こちらは年の差32歳、出会って4日で結婚することになった夫婦だ。
和彦さんには前妻との間に娘がいるが、「あと1人は欲しい。子どもを育てながら逆に学びたい」という想いが強かった。30歳以上年下の亜紀さんと結ばれ、子どもを授かり、現在は子育ての真っ最中である。
「今度も女の子です。1歳まではものすごく大人しくていい子だったのですが、今では可愛い暴れん坊。モノを投げたりするんです……。妻の祖母の葬式があって、その次女は妻と一緒にしばらく不在にしています。私は自宅で20歳の長女と2人暮らし。仲は悪くありません。それぞれ自由に暮らしています」
亜紀さんとも一度もケンカしたことがないという和彦さん。念願の第2子にも恵まれて幸せの絶頂だった昨年、咳が止まらなくなってしまった。
「PCR検査ではコロナ陰性で、レントゲンを撮ってもらったら肺がんだと診断されました。手術で肺を切除することを勧められましたが、私は嫌です。ヨモギなどを使った食事療法で治しました。医者は『肺がんでなく肺炎だったのかもしれないけれど、肺を取れば肺炎にもならない』と言っています。それ以来、病院には行っていません」
わけのわからない話だが、和彦さんが尋常ではない生命力と個性の持ち主だということはわかる。しかし、肺がんを告知されたときは死を覚悟し、亜紀さんにこんな別れを告げた。
「人生の最後の5年間。あなたと結婚できて子どもの顔も見られて最高に幸せだった」
亜紀さんは泣き崩れてしまったが、長女は「死ぬんじゃないぞ!」と激励してくれた。和彦さんの力強い血を引き継いでいるのかもしれない。
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