「60歳過ぎの夫」と仲良く暮らす妻たちのリアル 定年、介護など様々な出来事にどう夫婦で対応するか

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「高校を卒業してからはコンビニでアルバイトをしながら作曲をしたり絵を描いたりしているようです。芸術家を目指すならば大学に行っても何の役にも立たないので、彼女の好きなことを追求すればいい、と僕は思っています。自分の芸術を追求するほど大変なことはないからです」

芸術とは自分との戦いだという信念がある和彦さん。同じ分野のミュージシャンである亜紀さんにも、師匠につくのではなく自分で孤独に練習することを勧めている。

「コンクールに出て1位になるとか、芸術家はそういうことじゃないんです。自分の才能を信じて励み、まずは自分を感動させられるような演奏をしなければなりません」

独自の芸術家論を熱弁するほど健康を取り戻した和彦さん。自分の音楽を完成させつつ、若い頃に回ったように海外にも出ていくことを構想中だ。

「東ヨーロッパの音楽が面白いので、一緒に何かやりたいです。歳をとるにしたがって、道がどんどん広がっています。自宅を開放してのコンサートもやっていますので、ぜひ遊びにお越しください」

夫が定年、妻は現役バリバリのご夫婦

都内のマンションで2人暮らしをしている高柳大輔さん(仮名、62歳)と美紀さん(仮名、53歳)の年齢差は9歳ほど。大した年の差とは言えないが、大輔さんは新卒入社の大企業で定年を迎え、延長雇用の3年目。出勤は週4日だ。大輔さんが家事の大半を引き受け、外資系企業のマネージャーとしてバリバリの現役である美紀さんを支えている。定年後と現役の違いはやはり大きい。

大輔さんと美紀さんが登場してくれた過去記事(イラスト:堀江篤史)

「去年の秋に取材してもらってからの変化ですか? 料理も掃除もバリエーションが増えたことですかね。共用部分である外階段の掃除まで僕がやっています(笑)。あと、弓道を始めました。この歳になって殴り合うような武道は無理ですが、所作も美しい弓道は楽しいです」

家事も一人遊びもできる大輔さんの愛情に包まれ、美紀さんは安心を得られている。その一方で、「独身のままでも楽しく暮らせる人もいる。それぞれだ」という信条は揺るがない。美紀さんは自分の肉親との折り合いが悪く、かつての結婚相手や交際相手からはモラハラを受けた過去もあるからだろう。

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