こんなに物価高なのに「2%目標は未達」でいいのか 日銀が依拠する「物価見通し」の精度を確かめる

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展望レポートでは、実質GDPの見通しも示されている。ここで実質GDPについても予測精度を確認しておく。

実質GDPの予測誤差(実績値-予測値)は、2004年度から2022年度までの19年間の平均でマイナス0.72%となっており、物価見通しと同様に上方バイアスがある。平均絶対誤差は1.09%である。

もちろん、日銀だけではなく、民間エコノミストも見通しをはずす。

日本経済研究センターの「ESPフォーキャスト調査」を用いて、民間エコノミストの消費者物価、実質GDPの予測精度を確認してみよう(予測値は、当年度4月調査時点の民間エコノミスト約40人の平均値)。

民間のほうが「はずし度合い」は小さい

まず、消費者物価見通しだが、民間エコノミストの予測誤差は2004年度から2022年度までの19年間の平均で0.00%、平均絶対誤差は0.32%である。日銀見通しと異なり一方向のバイアスがなく、絶対値でみた誤差も小さい。

日銀の過大予測が目立った2014~2019年度についてみると、民間エコノミストも6年連続で過大予測となっているが、その幅はマイナス0.24%(実績値-予測値)と日銀のマイナス0.62%(いずれも年平均)より小さい。

実質GDPについての民間エコノミストの予測誤差はマイナス0.57%、平均絶対誤差は1.16%である。

消費者物価と実質GDPについて、日銀と民間エコノミストの予測精度をまとめた。

消費者物価、実質GDPともに実績値が予測値を下振れる傾向があることは日銀、民間エコノミストに共通している。これは過去20年の日本経済が予想以上に停滞してきたことを反映したものと言えるだろう。

各年度の予測の絶対誤差が小さいほうを勝ち、大きいほうを負けとして勝敗をカウントすると、消費者物価、実質GDPともに民間エコノミストの11勝8敗となった。民間エコノミストの予測精度のほうが若干高い。

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