ロシア国防相を金総書記が歓待した戦略的理由 北朝鮮とロシア、それぞれの思惑を専門家に聞く

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――先に指摘された「武装装備展示会」に金総書記がショイグ国防相を案内しました。これまで「北朝鮮製武器がロシアに輸出されているのではないか」という懸念がありましたが、これが再燃しています。

北朝鮮がロシアに武器などを輸出していれば、これは露骨な国連安保理決議違反になります。ロシアが北朝鮮からひそかに武器を購入する可能性は拭えません。当然、北朝鮮もそうすれば外貨を稼ぐことになります。

アンドレイ・ランコフ/1963年、旧ソ連・レニングラード(現サンクトペテルブルク)生まれ。レニングラード国立大学を卒業後、同大学の博士課程を修了。金日成総合大学に留学した経験もある。母校やオーストラリア国立大学などで教鞭をとった後、現職。著書に、『平壌の我慢強い庶民たち』『スターリンから金日成へ』『民衆の北朝鮮』『北朝鮮の核心』など邦訳も多数(写真:ランコフ氏提供)

北朝鮮は旧ソ連時代の兵器を大量に生産する能力は確かにあります。しかし、最新兵器を必要な規模で生産できるかどうかは疑わしい。そのため、ロシアが北朝鮮から武器を輸入したとしても、軍事的効果においてそれほど得るものは多くはないのが実情です。

もちろんロシアが「北朝鮮から武器を輸入する」と言えます。しかしこれはあくまでもアメリカなど西側諸国への脅しといったレベルでしょう。現実主義というよりは象徴主義的なものにすぎないと考えます。

参考記事「ロシアが北朝鮮に販売した武器を買い戻した理由」

北朝鮮も米韓に強硬なメッセージを発信

閲兵式では、金総書記ではなく強純男(カン・スンナム)国防相が演説した。金総書記が演説をしなかったのは、最高指導者がアメリカなど西側に恐慌的なメッセージを発信してしまうことによる中国とロシアへの影響を考慮したものと思われる。とはいえ、強国防相はアメリカと韓国の軍事的な動きに対して強く警告した。

例えば、韓国にアメリカの原子力潜水艦が寄港するなど、アメリカの戦略的装備が朝鮮半島に展開しつつあることに強く反発してきた。今回の閲兵式を含む祝賀行事を行うことで、北朝鮮はロシアと中国と連帯できること、また武器開発の成果を固辞することによって、アメリカや韓国に対し外交・軍事的な強いメッセージを送りたかったと考えられる。

2023年8月18日に、アメリカで日米韓首脳会議が開催されるが、今回の北朝鮮の姿勢をどうみるか。日本の安全保障にも重大な影響を与えそうだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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