日産、悲願の独立へ前進でも気を抜けない実情 ルノーとは対等な関係、米中でのEV挽回が急務

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中国事業の挽回に向け、今年度にEV「アリア」や現地ブランドのヴェヌーシアのPHEV含む新規車種4車種を投入する。加えて「(中国での)現在の販売見通しは保有する生産能力を大きく下回っている」として、今後は「海外市場向けの車両の生産も検討を進め、グローバルで事業の最適化を図っていきたい」(内田社長)とする。

ただ、カルロス・ゴーン氏がトップを務めた時代に拡大戦略を取った日産は、現在でもグローバルで540万台の生産能力を抱える。中国からグローバルに車両を供給すれば、過剰な生産能力の問題がほかの地域に移るだけだ。

発表翌日の27日、日産株は前日比0.6%高の始値をつけたが終値は2.9%安、28日は前日比でさらに3%安となった。株式市場は日産の先行きに自信を持てないでいる。

内輪でパワーゲームを続ける余裕はない

1999年に経営難だった日産の救済にルノーが出資して以来、規模の小さなルノーが事実上、日産の親会社として君臨してきた。そうした構図に日産内部は不満を募らせてきた。数年前には日産を経営統合しようとするルノーと、それを拒否する日産との間に緊張が高まった。

この1年ほどはルノーとの対立は穏やかになったものの、資本関係の見直しに経営リソースを取られ、自動車事業そのものの立て直しやEVシフトが遅れたことは否めない。

今回の契約締結によって、アライアンス内でのパワーゲームに費やす時間と労力が大幅に減ることは間違いない。ここからいかに巻き返すか、内田社長の責任は重大だ。

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井上 沙耶 東洋経済 記者

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いのうえ さや / Saya Inoue

商用車・部品メーカーを担当。大学時代は写真部に所属し、社会学を中心に学ぶ。趣味は、漫画を読むこと、映画のサントラを聴くこと。

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