日産、悲願の独立へ前進でも気を抜けない実情 ルノーとは対等な関係、米中でのEV挽回が急務

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同じ日に日産が発表した2023年度第1四半期(4~6月)の決算は、売上高が前年同期比36.5%増の2兆9176億円、営業利益は同98.1%増の1285億円、純利益は同123.9%増の1054億円と増収増益となった。連結売上高に寄与する出荷台数が北米、日本、欧州が牽引し25.5%増となったことや値上げが寄与した。

これを受けて、通期見通しの営業利益を前期比45.8%の5500億円へと300億円、純利益を同53.2%増の3400億円へと250億円上方修正した。一見、業績は好調だが、実態は楽観できる状況ではない。

というのも、日産のグローバル販売台数の約3割(2022年度)を占める中国の販売台数が、今第1四半期に36.8%減の16.2万台と大きく落ち込んだからだ(減少率は前期の中国での小型商用車事業の非連結化の影響を除く実質ベース)。

実は中国のみ第1四半期は1~3月で第2四半期(4~6月)の結果も出ており、販売台数は実質9.8%減と苦戦が続いている。通期見通しでも中国については期初の113万台から80万台へと下方修正している。これは前年実績からは15%減となる。

米中のEVシフトに出遅れ

日産は今回、グローバル販売台数の通期計画を400万台から370万台に引き下げたが、まさに中国の落ち込みに起因している。ちなみに中国事業は50%出資の持ち分法適用であるため、その数字は連結売上高や営業利益には寄与しない。持ち分法収益を通じて純利益に反映される。

中国では、現地メーカーのEVとプラグインハイブリッド車(PHV)の販売が急増しており、海外メーカーがシェアを落としている。日産を含む日系メーカーはEV、PHVともに出遅れており、苦戦を強いられている。決算発表の場で内田社長は中国事業について「危機意識を感じている」「このままではいけない」と繰り返した。

ルノーとの資本関係の見直しが進展したことに安堵の表情を見せた内田社長だが、中国事業の現状には強い危機感を募らせている(写真:日産自動車)

足元では堅調な北米も、先行きには不透明感が漂う。

アメリカでは昨年成立したインフレ抑制法(IRA)によって、EVへの税制優遇の適用に、北米でのEV生産や車載電池の調達という条件が課せられた。日産「リーフ」はこの条件を満たせずに優遇税制の対象から外れている。

アメリカ政府はEV推進を図っており、この先優遇税制の条件は厳しくなっていく。そうした中で日産の対策は遅れ気味だ。2010年に初代リーフを投入しEVで先駆けたはずの日産だが、世界的に存在感を示すことができないでいる。

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