日産、悲願の独立へ前進でも気を抜けない実情 ルノーとは対等な関係、米中でのEV挽回が急務
当初の計画より4カ月遅れたものの、〝いびつな〟資本関係は正常化へ向けて動き出した。
日産自動車は7月26日、ルノーグループとの資本関係の見直しで最終契約を締結した。ルノーが設立予定のEV(電気自動車)新会社「アンペア」へ日産が最大6億ユーロを出資することも決定した。
日産に43.7%出資するルノーが、保有する28.4%分の日産株をフランスの信託会社に信託することで、日産に対する議決権比率を15%まで引き下げる。これまで日産はルノーに15%出資しているにもかかわらず、フランスの会社法の制約から保有するルノー株の議決権を行使できなかったが、これが復活する。日産の内田誠社長は「本当の意味での対等な契約になった」と安堵の表情を見せた。
経営陣の足並みの乱れで時間を空費
もっとも、両社が資本関係の見直しで合意した今年2月時点では3月中の最終契約締結を想定していた。が、日産経営陣の足並みの乱れもあり、最終合意に時間がかかっていた。
具体的には、日産ナンバーツーのCOOだったアシュワニ・グプタ氏と社外取締役だった豊田正和氏がアンペア出資に慎重だった。しかし、6月下旬の株主総会をもって両者が取締役から退任、内田氏に権限を集中させる経営体制としたことで交渉が進展した。
「(ルノーと)23年せっかく築いてきたいいところを残しながら、違う形に変えてさらに伸ばしていくことを考えることが、1番の根底にあった。それに対する違ったご意見の方も正直いらっしゃった」と内田社長は振り返る。
各国の規制当局の承認を必要とするため、資本関係の見直しの完了は2024年3月末を予定する。それでもなお日産株が信託されただけで、本当の意味での独立ではない。日産は信託された株を買い戻す選択肢を持つが、EVシフトに巨額資金を要する状況でそこに資金を投じるべきか判断は難しい。
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