日本一条件厳しい「AIオンデマンド交通」の現実 2007年から始まった「長野県安曇野市」の挑戦

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前述のように、安曇野市では旧「あづみん」から、ドア・トゥ・ドアを採用しており、市民に対してキメ細かい行政サービスを実施してきた。それでも、長年にわたりなかなか解決できない課題もあった。

以下、安曇野市の作成資料から、旧「あづみん」における課題と「のるーと安曇野」採用による解決策についての記述部分を抜粋する。

■運行範囲、行ける範囲に制限がある(エリアを越える場合は乗り換えが必要)
・一部の運行エリアを拡大。乗り換えが必要となる仕組みが継続
■時間が見込めない(いつ迎えに来て、いつ目的地に着くのか、はっきりしない)
・利用者の希望に沿った最適ルートをAIが計算
・予約時に、迎え予定時間と目的地到着予定時間を利用者に通知
・電話予約でも、こうした時間を通知
・迎え時間に近づくと、予約便の現在位置をアプリで確認可能に
■予約が取りにくい・面倒(1時間単位での運行のため乗車可能人数に上限がある)
・電話予約に加えて、スマートフォンアプリからの予約を導入
・予約専用アプリで24時間受付
・リアルタイム予約が可能(以前は乗車の30分前までの予約受付)  
・アプリ利用者はクレジット決済可能に
■休日運行していない
・期間を限定して実証運行を実施

解決できたこと、できていないこと

以上の課題と解決策をもとに、もう少し掘り下げる。安曇野市 政策部 政策経営課 課長の黒岩一也氏と、同課企画担当主査の中嶋信之氏から話を聞いた。

旧「あづみん」でもっとも大きな課題は、「土日祝日に運行していない」ことだった。タクシー事業者とのすみ分けを考慮してきたからだ。この点については、これから実証を始めるという。

「あづみん/のるーと安曇野」の運行エリア(「あづみん/のるーと安曇野」利用案内より)

また、「正確な配車時間がわからない」という点については、人が判断して配車しているため「9時~10時の間」といった1時間の中での配車の通知にならざるをえなかったが、これはAI化により解消している。

一方で、「のるーと安曇野」を採用しても解消できない課題もある。例えば、道が狭いために車両が利用者の自宅前まで入れないケースがあるという点、乗降の際に介助が必要な場合、運転手の責任の範囲をどのように定めるかという点を挙げている。

次ページ道半ば、先進事例としての責務
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