「愛情不足のまま育った子」が大人になり陥る末路 親に余裕がない中、ひずみが子どもに向かう

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少年鑑別所で心理分析をする中で、こういったパターンで非行に走った何人もの少年に出会いました。彼らは、非行の事実を認め「後悔はしていない」と言っていました。恋人のためにやったことだから。恋人のためになったと信じているからです。「利用された」なんて、とても認められないことでしょう。

私が見たケースの中には、恋人のために臓器売買に加担した人もいました。やさしくしてくれて恋人になった人は、実は臓器売買を仕事にしていた。子どもの臓器を外国に売り飛ばすのです。

それでは、どこからその臓器を手に入れているのでしょうか? 普通は、そんなことがわかったら恐ろしすぎて逃げるか何かするでしょう。ところが、彼女は恋人のために手伝うことにしたのです。

「捨てられたくないから」

そう言っていました。重大な罪であることがわかっていても、恋人に捨てられたくないからやるのです。そして、手先となって危険な部分を手伝わされ、逮捕されます。こんなことがあってはならないと強く思います。

半グレという新しい組織

前回3回目記事の事例に出てきたリントは、半グレメンバーでした。半グレとは、暴力団のような明確な組織ではないものの、集団で犯罪を行う新興の組織です。もともとは暴走族から発展して組織されたものが多かったのですが、いまは暴走族自体が下火です。地域の不良集団が徐々にテリトリーを広げる中で組織化されたものが増えています。

暴力団は組織ありきですが、半グレは基本的に個人の集まりであるのが特徴。個人の目的のために犯罪を行いつつ、都合よく組織を使います。バックにこんな怖い組織がついているんだぞと見せられることが重要なのです。組織のためにお金を稼いでいるわけではありません。

どちらも反社会的組織であり、同じようなことをやっているように見えるかもしれませんが、半グレに所属している人と、暴力団に所属している人では求めているものが違います。リントがそうであったように、半グレがいいと思う人は、権威や居場所は求めているけれど、暴力団のような疑似家族的組織はわずらわしい。

一方、暴力団メンバーは「半グレなんて絶対に嫌だ」と言います。暴力団メンバーは親や兄貴に認められ、面倒を見てもらい、その代わり組織のために体を張るというその関係性を求めていることが多いのです。

近年、暴力団構成員の数は減少を続けています。取り締まりが厳しくなっており、暴力団では飯が食えないということもあるでしょう。同時に、暴力団内部での関係性が昔ほど求められなくなってきている面もあると思います。半グレのような、個人の集まりとしてのゆるやかな組織を求める人が増えているのです。

実際、半グレメンバーは増えています。ただ、暴力団と違って構成員が明確になっていません。お互いに名前を知らないことも多いくらいです。そのときは一緒にチームを組んで強盗をやったけれど、誰なのか知らないということが普通にあります。この匿名性の高さが、居心地のよさにつながっているのかもしれません。

警察は、半グレも暴力団と同じような認定(準暴力団)をしており、摘発することができます。約4000人の半グレメンバーを把握し、情報収集を行っているとも言われています。ただ、どこからどこまでが構成員なのかを見極めるのは困難であるのが現状です。

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