次の図は、公的医療保険制度を持つ日本と、それを持たない市場依存型福祉国家の代表、アメリカでの、家計所得と、使った医療費の関係を表した図である。公的医療保険制度の目的は、(所得や資産という支払い能力ではなく)医療ニーズに応じて医療を利用できるよう、消費を平準化した社会を構築することである。図をみればわかるように皆保険の日本は、それに近い社会になっており、所得と関係なく医療が利用されている。
このような医療に要する費用を、所得比例、労使折半で賄っているのであるから、所得の再分配構造は、次の図のようになる。
誰がネットの給付を受けるのかを考えよう
上図は、所得に関係なく給付の必要性は一定と考えられる医療の場合だが、子ども・子育て支援ではどうだろうか。そこでもネットの所得移転構造を見る必要があることについて、私は「第1回こども未来戦略会議」で次のように述べている。
介護保険料を払っている人が介護サービスを利用する場合には、今、介護を必要としていない人たちの支援のおかげで、今の利用者本人やその家族のネットの給付は大きくプラスになる。
そして当然のことであるが、子育ても同じであり、図2「貧困線と貧困のライフサイクル」において支出が膨張している子育て世帯、子育て世代のネットの給付は大きくプラスになる。それが、消費の平準化を行う所得再分配政策というものである。
しばしば、「子育て世帯に負担を課すのはおかしい」「その世代に負担を課すと少子化が進む」という論を見ることもあるが、それは、受益をネットで考えるべき所得の再分配政策というものを理解していないだけの話である。
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