介護福祉士に「一発合格」ベトナム人女性の決意 介護士の仕事を身に付けつつ、日本語を猛勉強

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利用者たちからも、「めんこい、めんこい」とかわいがられ、「これはベトナム語でなんて言うの?」などとミニベトナム語講座も繰り広げられるほど、最初から打ち解けたという。

「一番うれしかったのは、職場の皆さんも利用者さんも優しく受け入れてくれたことです。ベトナムにいる家族はさみしがるかもしれませんが、私はできれば日本で長く働きたいです。デイサービス以外の介護の仕事もやってみたいですし、ほかの福祉関係の資格も取得して仕事の幅を広げたいです」

と、チャンさんは今後のキャリアアップへの意欲に満ちている。

職場を逃げ出す実習生も少なくない

外国人技能実習生というと、低賃金や長時間労働など劣悪な労働環境を強いられているイメージを持つ人も多いかもしれない。中にはそうしたケースがあることも事実であり、「職場を逃げ出す実習生も少なからずいる」と、宍戸理事は話す。

だからこそ、受け入れを支援する機関や職場となる施設側がしっかりとした研修体制や労働環境を整えること。そして、業務に慣れるまで丁寧にサポートしたり、キャリアアップへの道筋を示したりしていく必要がある。

同組合では、施設に入職した後、1年間は毎月実習生一人ひとりと面談を行い、職場環境や生活状況についてヒアリングを行っている。何か問題があれば、関係各所と相談しながら解決に導くという。

とはいえ、外国人として特別視しすぎるのも、本人たちがかえってなじめなくなると佐藤さん。

「彼女たちが親しみやすい人柄というのもありますが、一緒に働いていてまったく違和感がありません。外国人だからといって特別視することもなく、ともに働く仲間として自然と職場になじめていることも、彼女たちが長く働けている秘訣かもしれません」

「ベトナムの子たちがかわいくて仕方ない。できれば日本で結婚してずっと働いてくれるとうれしいんだけどなぁ」と、利用者の佐藤マサ子さん(筆者撮影)

介護業界の人材不足は、年々深刻化している。2021年に公表された厚生労働省の試算によれば、必要となる介護職員の人数は2025年度が約243万人、団塊ジュニア世代が65~70歳になる2040年度は約280万人に及ぶと言われる。

厚生労働省の調査結果(2021年度)によると、全国の介護職員数が約214万人であることから、2040年までに約66万人増やす必要がある。

大量の人材不足を解消するための対策として、介護職員の処遇改善やICT・介護ロボット導入による業務効率化が叫ばれるが、その中でも要となるのが、外国人技能実習生をはじめとする外国人材の活用だ。

チャンさんたちのような優秀かつ意欲的な外国人材が、国家資格取得によって、長く活躍し続けてくれることは、日本の介護の未来を救うための大きな一手となりうるかもしれない。

伯耆原 良子 ライター、コラムニスト

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ほうきばら りょうこ / Ryoko Hokibara

早稲田大学第一文学部卒業。人材ビジネス業界で企画営業を経験した後、日経ホーム出版社(現・日経BP社)に。就職・キャリア系情報誌の編集記者として雑誌作りに携わり、2001年に独立。企業のトップやビジネスパーソン、芸能人、アスリートなど2000人以上の「仕事観・人生哲学」をインタビュー。働く人の悩みに寄り添いたいと産業カウンセラーやコーチングの資格も取得。両親の介護を終えた2019年より、東京・熱海で二拠点生活を開始。Twitterアカウントは@ryoko_monokaki

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