「天然ガス」に国の命運を賭けたプーチンの戦略眼 ロシアが世界の「エネルギー盟主」となった理由

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もう1つのロシアを代表する国営企業が、世界最大級の石油企業であるロスネフチです。ロスネフチは、サハリン、シベリアといったロシア北部、東部、チェチェンを含む南ロシアで石油、天然ガスの生産を行っています。

2007年にロシアの民間石油企業ユコスの資産を取り入れ、2012年には大手BP系の一部を買収し、合併・買収に伴って保有埋蔵量・日産量の面で世界最大級の石油会社となりました。一時はガスプロムとの合併計画もありましたが、実現していません。

OPECプラスを主導し価格に影響力

プーチンのロシアが、エネルギー国家としての地位を強固なものにした背景として、OPEC諸国との連携を深めたことは見逃せません。2016年、プーチンは、ロシアの主導によって、原油生産の世界シェア20%を占めるOPEC非加盟10カ国を、OPECと連携させたOPECプラスという組織を立ち上げました。

この組織は、以前は圧倒的であったOPECの原油生産の世界シェアが過半を切り、41.5%(2019年)まで落ち込んだことをきっかけとしています。影響力の低下が懸念されたOPECでしたが、OPECプラスは、世界全体の原油生産の60%以上を有することとなり、世界の原油価格支配権を取り戻しました。

このOPECプラスのなかで、生産量が突出して多いのがロシアとサウジアラビアであり、この2つの国がリーダーと言える存在です。つまり、ロシアはOPECプラスを動かすことで石油の価格形成に深く関与できるようになり、さらには、石油と連動する天然ガスの価格についても大きな影響力を持つようになったのです。

ここまでロシアが台頭できた背景として、アメリカで起こったシェール革命の影響を無視するわけにいきません。シェール革命によってエネルギー自給国となったアメリカは、OPECの動向に対して、以前ほどの関心を示さなくなっていたのです。

こうしてエネルギー強国となったロシアは、経済的な豊かさを取り戻していきました。プーチン就任前に比べ、国民1 人当たりのGDPは実に5倍にまで成長しています。また、プーチン大統領は就任直後に、それまでの12%、20%、30%という累進課税であった所得税を一律13%とし、多くの国民に歓迎されました。

同時に、世界もロシアより供給されるエネルギーを基に経済や産業を成長させ、安定した豊かな社会を手に入れようとしていました。ところが、2022年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻が世界を一変させることになります。

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