お粗末なロンドンの水道が示す「民営化」の末路 老朽化で水漏れに汚水放流、再国有化に支持
2030年までに汚水の放流量を減少させるため、下水処理施設に16億ポンドを投じる計画を発表している。
処理前の下水が放流された河川や海で遊泳し、健康被害を訴えるケースもある。環境庁はさまざまな観測地点で水質を測定し、定期的に公表している。放流を削減するための下水管の拡張工事などには膨大な資金が必要で、特効薬がないのが現状だ。
水道会社が抱える巨額の負債も問題視されている。
英国の水道事業全体では2022年3月末時点で606億ポンドの負債を抱え、テムズウォーターの負債がそのうちの137億ポンドを占める。財務の健全性を計る指標の1つで、企業の自己資本に対する負債の割合を表す「ギアリング比率」は業界全体で68.5%、最も低い水道会社で39.7%、テムズウォーターが80.6%と最も高い。
インフレで膨れ上がる負債
老朽化した設備の更新や環境規制への対応など、大規模なインフラ投資が必要な水道会社が、巨額の負債を抱えること自体は珍しくない。
問題は負債の多さと、その半分程度がインフレ連動債のため、最近の物価上昇で返済負担が増していることだ。しかも、物価上昇による元本の変動が水道料金の値上げで調整されず、負債の返済負担が膨れ上がる構図だ。
というのも、過去に発行されたインフレ連動債の多くが、住宅価格を含む小売物価指数(RPI)を参照指標としているのに対し、水道料金の見直し時に参照されるのは、住宅価格を含む消費者物価指数(CPIH)であり、前者の方が後者よりも一般に上昇率が高くなる傾向がある。
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