お粗末なロンドンの水道が示す「民営化」の末路 老朽化で水漏れに汚水放流、再国有化に支持
手元資金を持つテムズウォーターがこれらの事由に該当する可能性は低かった。ただ、別の水道会社も同社ほどの高レバレッジではないにせよ、同じような問題を抱えている。
政府は利用者の不安を和らげるため、万が一の場合もSAR発動によって水道供給や下水処理が滞ることはないことを伝えようとしたのだろうが、逆に投資家の不安を誘った面もある。
投資家にとってのもう1つの不安材料は、次の規制期間が始まる2025年4月以降、信用格付けがBaa2/BBBで見通しがネガティブな場合、配当金を支払うことができないという規則の存在がある。大手格付け会社が付与する同社の信用格付けは、こうした規則が該当する水準にあるか、それに極めて近い水準にある。
水道民営化の功罪
水道事業は長期に安定した収益が見込まれ、Ofwatによる規制も、「消費者利益」と「水道事業の安定性」を確保する透明性が高い仕組みとして評価されてきた。
1989年の民営化後、巨額の設備投資費用を賄うため、水道料金はむしろ値上がりしてきたが、同時に人件費や経費削減など経営効率の改善も進んだ。この点は民営化による成果だろう。
だが、老朽化した水道管の破裂や水漏れ、環境破壊を引き起こす放流、散発的な給水制限などが相次ぎ、消費者の水道会社を見る目は厳しい。
今回の問題発覚後の一連の報道でも、「水道会社は民営化して以降、株主に高額の配当金を支払ってきた一方で、重要インフラの維持・管理に投資をしてこなかった」、「消費者が料金引き上げで負担を強いられてきたのに、水道会社の経営陣は高額報酬を受け取っている」といった批判の声も聞かれる。
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