すすきの再開発、地元不動産が震撼する「高額賃料」 札幌で熱狂する「商業施設の開業ラッシュ」とは
2022年以降、すすきのエリアでは複数のビルが建て替えられ、新たに複合商業ビルとして生まれ変わろうとしている。
すでに「イケウチゲート」(2022年10月開業)や「PIVOT CROSS(ピヴォクロス)」(2023年6月開業)が新規開業したほか、大手ゼネコンの鹿島による「4丁目プラザ」(2025年春開業予定)や、ダイビルが取得した「PIVOT(ピヴォ)」(2026年開業予定)の開発が始まっている。
イケウチゲートやピヴォクロスなど新規の商業ビルは、すすきのエリアの店舗の賃料相場を大きく引き上げている。複数の地元不動産仲介関係者によれば、「札幌市内では需要が限られる空中階の店舗区画でも、坪2万~3万円程度の賃料で募集している。周辺物件の倍近い賃料水準だ」という。
新価格が登場する中、地元関係者が注目するのが、百貨店「サンデパート」の跡地で開発される大型複合ビル「モユクサッポロ」だ。物件はゲオホールディングスや北洋銀行などが保有する。
7月20日にグランドオープンするモユクサッポロは、地上28階・地下2階建てであり、4~6階には水族館が入居する。また低層階の商業施設には、ソニーストアやドラッグストアのサツドラなどが入居予定だ。札幌市の商業一等地である狸小路商店街だけでなく、札幌駅につながる「さっぽろ地下街ポールタウン」にも直結するため、利便性は高い。
坪単価7万円強の強気な賃料設定
地元関係者を驚かせたのが、強気な賃料設定だ。モユクサッポロの路面店(約55坪)の募集賃料は、税別で月額390万円を超えており、坪単価は7万円強になる。
「一等地の稀少物件とはいえ、相場より少なくとも坪2万~3万円は高い。地元テナントでは入居できないような賃料設定だ」と、札幌市内の不動産仲介会社の幹部は舌を巻く。
2023年6月末時点では、テナント募集中の垂れ幕がかかっておりまだ入居者は決まっていないようだ。一方で、ある不動産仲介の関係者は、「すでに内々でテナントが決まりつつあるようだ。7月の全館開業までのオープンは難しくとも、2023年内には路面店も稼働するのではないか」と話す。
足元では、全国的に店舗テナントが出店攻勢を再開しているようだ。不動産サービス大手CBREの奥村眞史シニアディレクターは、「高単価なラグジュアリーブランドは、さらなる需要拡大を見据えて新規出店に積極的だ。東京・銀座や表参道などの商業一等地では、路面店の賃料がコロナ前水準を超えている。東京都心だけでなく大阪や福岡など主要都市での出店意欲も高い」と説明する。
観光庁によれば、訪日外国人の1人当たり旅行支出は21.1万円(2023年1~3月期)であり、コロナ前の2019年比で43.2%増だった。円安の影響もあり、訪日外国人の日本での消費は確実に増えている。旅行客数が2019年水準に戻ればコロナ前を超えるインバウンド需要が期待できるため、店舗テナントは好立地で積極的に出店しているというわけだ。
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