大宮の「オフィス市況が絶好調」の意外すぎる事情 築古物件なのに都心の大型ビルを超える賃料も

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大宮エリアのシンボル物件であるソニックシティビル。築35年のオフィスビルだが、都心5区の大型ビルの平均よりも賃料水準は高い(写真:記者撮影)

「大宮エリアのオフィスビルは空室率が低くて賃料水準も高い。軟調な都心のオフィス市場とは別次元だ」――都内のオフィス仲介大手の幹部はこう語る。首都圏のオフィス市況が厳しい中、コロナ禍を経ても絶好調なのが埼玉県の中心部・大宮エリアだ。

2023年、首都圏では大型ビルが相次いで竣工するため、デベロッパー関係者からはオフィスの供給過剰を懸念する声もあがる。都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)で約45万坪を超えるオフィスフロアが新規供給されるほか、横浜エリアでも約4.5万坪超が供給される計画だ。

オフィスフロアが大量供給されるものの、それを吸収できるほどテナント需要は拡大していない。コロナ前の首都圏オフィス市況を牽引してきたITや金融、コンサル業などの大手企業はテレワーク化を進めており、従来のようなオフィス面積は不要になりつつある。

「貸し手優位の市場」で絶好調

首都圏のオフィス市況に逆風が吹く中、絶好調なのが埼玉県の中心部だ。オフィス仲介大手の三幸エステートによれば、都心5区や横浜エリアはコロナ前の2019年と比べて空室率が上昇している一方で、大宮駅周辺などに代表されるさいたまエリアの空室率は低位安定している。

あるオフィス仲介会社のベテラン社員は、「大宮エリアは大型ビルの新規供給がほとんどなく、貸し手優位の市場だ」と指摘する。2014年9月に竣工した日本郵便の「大宮JPビルディング」(延床面積は約1.3万坪)以降、大宮駅周辺ではおよそ7年にわたり、フロア面積が100坪以上の大型ビルが開発されなかった。

さいたま市も2019年7月に策定した「大宮駅グランドセントラルステーション構想」の中で、「企業から選ばれるポテンシャル」があるものの、大宮エリアの弱みとして「オフィス床の不足」を挙げている。

再開発による大型ビルが相次いで竣工している東京都心や横浜市みなとみらいエリアとは違い、大宮駅周辺の再開発はまだ途上だ。大宮区役所の都市局の担当者は、「東口エリアをはじめとする大宮駅周辺には、小型ビルのオーナーなど多数の地権者がいる。利害関係者の多くが納得できるよう、時間をかけて再開発の合意形成を進めなければならない」と話す。

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