大宮の「オフィス市況が絶好調」の意外すぎる事情 築古物件なのに都心の大型ビルを超える賃料も

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1983年に「大宮駅東口第一種市街地再開発事業」が告示され、自治体と市民による再開発の検討・協議が始まったものの実際に完成したオフィスビルは、大型複合施設「大宮門街」(延床面積は約2.4万坪)のオフィス部分だけだ。また同施設についても、2009年に再開発準備組合が設立されてから、2021年10月の竣工までにおよそ12年が経過している。

オフィスの新規供給が限定される中、さいたまエリアのオフィスビルの平均賃料は2020年以降、上昇している。2022年には品川・大田区の平均賃料を、さいたまエリアのオフィスの平均賃料が上回っている。

都心の大型ビルの賃料水準を超える築古物件も少なくない。大宮ソニックシティは埼玉県やさいたま市、日本生命が保有する複合商業ビルであり、オフィス棟であるソニックシティビルの延床面積は約2.4万坪だ。

1988年3月に竣工した築古ビルにもかかわらず、坪単価の賃料は2万円半ば~3万円弱といわれている。これは都心5区の大型ビルの平均賃料2万1401円(2023年3月末時点、三幸エステート調べ)よりもはるかに高い水準だ。

ソニックシティビルを運用・管理する日本生命保険の許嘉峰ビル事業運用担当課長は、「コロナ禍で一時的に空室が増えたものの、2023年6月頃に満床となる見通しだ。ランドマーク的な物件であるため、空室があれば多数の入居希望が寄せられる」と話す。

大型ビルの開発が徐々に始動

2021年10月に竣工した大型複合施設の「大宮門街」(写真:記者撮影)

コロナ禍を経て、大宮駅周辺では大型ビルの開発が徐々に進んでいるが、それでもなお当面の間は供給が限られている。

大型複合施設「大宮門街」では、外食企業のハイデイ日高や全国生活協同組合連合会など、すべてのオフィスフロアでテナントが入居している。

2023年には、大型ビル「大宮ソラミチKOZ」(5月竣工予定、延床面積は約2万坪)や、大和ハウス工業による大型複合施設「大宮区桜木町複合施設ビル」(12月竣工予定、延床面積は約1.2万坪)が予定されている。

大和ハウスリアルティマネジメントの高橋将寛執行役員は、「大宮エリアは交通の要衝だが依然として新規供給が不足しており、力強いオフィス需要が眠っている印象だ。30~40坪程度のテナント需要を取り込めており、大宮区桜木町複合施設ビルは7~8割程度のテナントが内定している。2024年3月頃の稼働に向けて、2023年内には満床にしたい」と意気込む。

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