大宮の「オフィス市況が絶好調」の意外すぎる事情 築古物件なのに都心の大型ビルを超える賃料も

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大宮エリアには、大手をはじめとする企業の支店ニーズがある。前出のオフィス仲介のベテラン社員は、「国道17号線へのアクセスが良く、車を使った営業活動がしやすい。北関東を網羅する拠点を開設するならば、大宮エリアはまず候補地に挙がる」と話す。

大宮駅はJRなどの13路線が乗り入れるターミナル駅であり、東北・秋田・山形・上越・北陸・北海道方面からの新幹線が集結したハブにもなっている。鉄道を使うことで東北エリアにもアクセスできる交通利便性の高さは、大宮エリアの強みだ。

大宮駅東口は商店街などで街並みが形成されている。目下、複数の再開発準備組合が設立されつつある(写真:記者撮影)

さらに、ある首都圏のデベロッパー幹部は「大宮エリアの近隣には住宅が集積しているので、コールセンターなどのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を手がける企業にとっても人材を採用しやすいメリットがある」と指摘する。

とはいえ、大宮エリアで主なターゲットとなるのは中小規模のテナントだ。日本生命保険の許氏は、「士業やクリニックのような50坪程度のテナントが中心であり、フロア貸しではなく1フロアを細かく分割して貸している」と話す。

大手デベロッパー主導の再開発計画も

足元では、再開発案件が少しずつ出てきた。2022年3月、東京建物や中央日本土地建物、大和ハウス工業が主体となる「大宮駅西口第3-A・D地区」の再開発組合の設立が認可された。

同エリアでは大型複合施設(延床面積は約1.2万坪)の開発を計画しており、2027年度に竣工予定だ。また大宮駅の周辺では複数の再開発準備組合が設立されつつあり、野村不動産などのデベロッパーや大林組を始めとするゼネコンが関与しているようだ。

ただ、複数のデベロッパー関係者からは「横浜市のみなとみらいエリアのように大規模開発が相次いだ結果、大宮エリアでもオフィスが供給過剰にならないか心配だ」という懸念の声も上がる。オフィス一辺倒ではない多種多様な機能を備えた慎重な再開発が求められる。

佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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