すすきの再開発、地元不動産が震撼する「高額賃料」 札幌で熱狂する「商業施設の開業ラッシュ」とは

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コスト負担力のあるラグジュアリーブランドなどであれば、地元関係者の相場観を上回る賃料の路面店にも入居可能だ。「全国でチェーン展開するテナントの札幌市内への出店意欲も非常に強い。そうした事業者は札幌市内のテナントよりもコスト負担力がある。他の大都市と比べて賃料水準は低く、札幌市内の店舗賃料にはまだ上昇余地がある」(別の札幌市内の不動産仲介幹部)。

2020年から2030年にかけて、札幌市内では再開発が相次ぐ。JR札幌駅周辺では商業施設「札幌エスタ」をはじめとする南口再開発(2028年度竣工予定)、家電大手のヨドバシホールディングスによる西武百貨店札幌店の跡地「北4西3地区」の開発(2028年度竣工予定)などが進行中だ。また大通り公園沿いでは、平和不動産による「大通西4南地区第一種市街地再開発事業」(2028年竣工予定)が計画されている。

札幌市内で不動産賃貸・開発を手がける藤井ビルの古屋賢司監査役は、「札幌エリアには再開発をまとめられるようなデベロッパーがほぼおらず、都市開発が遅れていた。今後の再開発で高級ラグジュアリーホテルやハイグレードオフィスビルが増えれば、札幌の魅力がさらに増すだろう」と話す。再開発が進んで札幌市内に富裕層や大企業が集まれば、オフィスや店舗などの需要も一層拡大していくことになる。

実は、札幌市のビルの多くは、大規模修繕や建て替えの時期を迎えつつある。札幌エリアの街づくりに詳しいノーザンクロスの山重明社長は、「1972年の札幌の冬季オリンピックから50年ほど経過し、当時整備された都市基盤や施設が更新の時期を迎えている。東京都心と比べて高い利回りと安定した収益を見込んで、大手デベロッパーや機関投資家から資金が流入しており、札幌市中心部の再開発も進んできた」と説明する。

札幌市の開発プロジェクトは一進一退

旧HBC本社跡地の開発では、組み上がった鉄骨を解体して建て直す異例の事態に(記者撮影)

一方で、札幌市内では開発プロジェクトが延期・見直しになるケースが増えている。NTT都市開発が開発を進める旧HBC本社跡地での大型複合ビルは、2024年2月に竣工予定だった。ところが、施工を受注した大成建設による鉄骨の精度不良が発覚し、竣工は2026年6月末に延期された。

2016年に札幌市大通り公園沿いの旧農林中央金庫札幌支店を取得した森トラストは、外資ホテルを核とした複合施設の開発を検討中だが、具体的な計画は定まってない。

「創世1・1・1区(さんく)」の再開発も、今後の開発スケジュールの見通しが立っていない。北海道電力の本店ビルや北海道中央バスの札幌ターミナルなどで構成される「大通東1地区」では2029年度に大型複合ビルが竣工予定だったが、建築費の高騰などを受けて計画を見直している。

ある大手不動産会社の幹部は、「札幌エリアは職人の数が限られている。相次ぐ再開発でゼネコンが新たに施工を受注できないケースも多い」と語る。札幌市で進む開発の熱狂は、紆余曲折を経つつも、まだまだ続きそうだ。

佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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