女子大生悩む、「どうしたら親友できますか」 「人に興味を向ける」ことは時に危険をはらむ

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幼稚園や小学校時代のお友達はもちろん、大人になってからの友人であっても、僕らが友人と出会い、関係性を深めていくときには、大きく分けて2つのパターンがあります。ひとつは、相手がいい人で、気が合うから友達になる、というもの。もうひとつは、どうしてもその人に興味が湧いて気になって仕方がなかったから友達になる、というものです。

僕は、親友という関係性に発展する可能性が高いのは、後者の出会いだと考えるのです。

というのも、「この人はいったいどういう人なのだろう?」という興味を持った相手とは、僕らは毎日、何時間一緒に話していても、決して飽きることがないからです。しかし、単に「趣味が合う」とか「いい人」というだけでは、そうはいきません。相手に対する興味や関心がなければ、たった一時間でも退屈してしまうでしょう。

「人が人に興味を持つ」ことがはらむ危険性

あなたが相手に興味を持ち、相手もあなたに興味を持つ。それはいわば、振り返ったときに「親友」と呼べるような関係性が生まれるための、絶対条件といっていいぐらい大きなポイントだと僕は考えます。

ただ、勘がいい人ならピンと来ていることと思いますが、こうした「互いが互いに強い興味を持つ」ような出会いは、必ずしも幸せな関係性に発展するわけではありません。なぜなら、「人が人に興味を持つ」ということは、相手が自分の理解を超えた側面を持っている、ということにほかならないからです。

「自分の知らないことを知っている人」「自分とはまったく異なる世界を生き抜いてきた人」だからこそ、私たちは他人に興味を持ちます。当然、その中には、危なっかしいことをしている人に興味を持ってしまうこともあれば、精神的に不安定で、あなたの人生に多大な迷惑をかけてしまうかもしれない、その「不安定さ」も含めた人間存在全体に興味を抱いてしまうこともあるでしょう。こういったケースでは、親友というよりは、不幸な関係性に発展してしまう可能性も十分にあるのでしょう。

そういう危険があるために、自分の知らないことを知っている人、自分とは異なる価値観を持つ人を遠ざけようとする人もいます。というよりも、自分の枠組みを揺さぶったり、変化を促すような相手にはなるべく近づかない人のほうが、おそらくは多数派ではないでしょうか。しかし、そうやって出会いに対して防衛的になっていると、自分の周りには、自分の理解の枠の中に収まるような相手ばかりになってしまうでしょう。

「自分を守ろう」という気持ちが強くなりすぎてしまい、素直に「他人に興味を持つ」ということができなくなってしまっている可能性はないでしょうか。自分とは違う世界に住む人、自分の人生とは一見関係なさそうな人に興味を向ける。まずはそこから始めてみるのもよいと思います。

少なくとも「困ったときに相談できるような相手」を探すよりも、「この人、いったい何なんだろう?」と興味を惹かれるような相手を見つけて声をかけるほうが、何十年か後に振り返ったとき、親友と呼べる人と出会うことができる可能性は、はるかに高いだろうと僕は思うのです。

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名越 康文 精神科医

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なこし やすふみ / Yasufumi Nakoshi

1960年、奈良県生まれ。精神科医。専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、99年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。
著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSコミュニケーションズ、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。
夜間飛行よりメールマガジン「生きるための対話」刊行中。オフィシャルウェブサイトはこちら。twitterはこちら

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