フジの昼番組「ぽかぽか」"意外"と面白いその中身 すべての回を視聴したからこそわかる魅力

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MC陣の魅力にもふれておこう。最後になってしまったが、『ぽかぽか』の面白さは、MC3人が起こす化学反応によるところが一番大きいかもしれない。

ハライチの2人についてはいうまでもないだろう。地元が同じで幼稚園から一緒だった幼馴染、芸人としてもすでに豊富な経験値を持つ2人だけあって、生放送の緊張のなかでも阿吽の呼吸で笑いに持っていける安定した力量が光る。

加えて『ぽかぽか』では、それぞれの素顔が見えてくる面もある。特に岩井は、猫好きなど自分の趣味をそのままコーナーにして、思う存分楽しんでいる。また世間のイメージとは逆に実は岩井のほうが社交的で、澤部のほうがそうでもないという発見もある。そしてそのことがまたネタになり、笑いにもつながっている。

観客も巻き込んで“ひたすら楽しく”

イメージとのギャップという意味では、神田愛花も負けていない。元NHKアナウンサーということでお堅いイメージを持たれがちだが、この『ぽかぽか』では天然で自由奔放、だが常に体を張って一生懸命という持ち前のキャラクターが全開になっている。

特に意外性抜群な部分は、生放送向きということだ。つい先日も、お好み焼きを上手くひっくり返せるかという一見誰でもできそうなことにチャレンジしたのだが、手前ではなく向こう側にひっくり返したためお好み焼きがホットプレートから飛び出し、全部床に落ちてしまうという大ハプニングを引き起こしていた。その後食べ物を無駄にしてしまったことを本気で反省し、平謝りだったのも彼女らしい。

ひとつ言えることは、この番組では3人もそうだが出演する全員の関係に上下がなくフラットだということだ。だから、すぐテンパってしまいとんでもない失敗もするが憎めない山本賢太、通称ヤマケンのような、局アナの枠からはみ出たキャラも活きる。そのあたりは、しっかり令和のいまに合った空気感がある。

現在の民放キー局の昼の番組は、『ひるおび』(TBSテレビ系)、『大下容子ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系)、そして『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)と硬軟さまざまではあるが、情報番組が主流だ。

そのなかで、観客も巻き込んでひたすら楽しくやっていこうという『ぽかぽか』のような純粋なバラエティは貴重で、ユニークな存在感を発揮しつつある。朝の時間帯では『ラヴィット!』(TBSテレビ系)が似たポジションから確固たる地位を築いた。

もちろん好みはあるだろうが、まだ見たことがないというかたは一度チャンネルを合わせてみてはいかがだろうか。

太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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