冷夏が多いはずの"エルニーニョの年"の大異変 今年は猛暑に、強い台風も多く発生する可能性が高い
「エルニーニョ現象が発生した年は、冷夏になるというパターンが多かったのですが、今年の夏の気温はエルニーニョ現象よりも、正のインド洋ダイポールモード現象の影響を強く受けそうです。すると、台風の数が増える傾向があります。つまり、今年は台風全体の数が増え、強い台風が占める割合も増えると予想されます」
過去の台風の発生数、接近数、上陸数を見ると、エルニーニョ現象と正のインド洋ダイポールモード現象が同時に発生した1997年と2015年は、いずれの数も平年より多くなっている。強い台風の割合も明らかに高い。
「われわれのスーパーコンピューターを使ったシミュレーションでも同様な結果が出ています」
ちなみに、2015年に発生した台風27個のうち、「非常に強い」「猛烈な」台風は計16個もあった。
その一つ、台風15号は中心気圧930ヘクトパスカルまで発達。8月23日に沖縄県・石垣島では付近を通過する際に観測史上1位となる最大瞬間風速71メートルを観測。その後、強い勢力を保ったまま25日に熊本県荒尾市に上陸し、九州に記録的な暴風をもたらした。
強い台風が多数発生
今夏はそのような「猛烈な」台風が、頻繁に襲来するのだろうか。
「強い台風が増える可能性が高いことは間違いありませんが、その強い勢力を保ったまま日本付近を通過するかはわかりません。台風の北上が高気圧に阻まれている間に勢力が弱まるかもしれませんから」
台風の勢力は、台風通過時の日本の南の海域での海面水温も強く影響する。エルニーニョが強まれば、熱帯域では、東太平洋の海面水温が高くなり、西太平洋の海面水温は低くなる。一方、日本の南(亜熱帯~中緯度)の海面水温は、黒潮の変動などの影響も受けながら、複雑に変化する。
さらに、台風の発生には、海面水温のほか、熱帯における大気の対流活動の変化が大きく関係している。
「熱帯の大気の対流は30~60日の周期で活発になったり、不活発になったりすることを繰り返しています。西太平洋で対流が活発な時期に差し掛かると台風ができやすい。そのとき、たまたま日本の南海上にある高気圧が弱まったりすると、台風が強い状態を保ったまま日本に接近することもあり得ます」
今年は強い台風が多く発生することは間違いなさそうだ。そして、台風発生のタイミングによって、強い勢力で日本付近を通過するかが変わってくる。
「だから、今年の台風には特に注意が必要なのです」
猛暑に加えて強い台風の増加……今年の夏も“大荒れ”になりそうだ。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)
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