【爪の水虫】10人に1人が感染、爪切りの「NG行為」 塗り薬より飲み薬で内側から効かせるのが有効

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「主流は飲み薬で、血流で有効成分を爪の病変部に届かせます。塗り薬ではなく、飲み薬が推奨されるのは、薬を飲む期間が3~6カ月と比較的短く、治療成功率が高いからです。難治とされている爪水虫で、飲み薬でもまだ60%程度の人しか完治できませんが、それでもその割合は上がってきています」(福田医師)

飲み薬の主な副作用として、肝臓の障害がある。爪水虫は高齢者に多いので、基礎疾患で複数の薬を飲んでいる人や、肝臓の検査値が悪い人などは、飲み薬を使用できないこともある。そのような場合は塗り薬を使う。

塗り薬は液状で、直接、患部の爪に塗る。1日1回の塗布を少なくとも1年ほど、根気よく続ける必要がある。

メリットとしては、有効成分が爪と皮膚にとどまるので、内臓などに副作用が出るリスクはないことが挙げられる。一方、臨床試験では完治率が15~20%以下にとどまるうえ、塗った爪の周囲のかぶれのような副作用が表れるといった問題点がある。

「飲み薬にしろ、塗り薬にしろ、爪の色や肥厚を治すのではなく、水虫菌を抑えるのが薬の作用。言い換えれば、所定の期間、しっかり使用して水虫菌を殺せれば、あとは爪が生えかわるのを待てばよいのです」と福田医師は言う。

爪水虫の人の爪の切り方

薬を使用中にも根元から新しい爪が生えてくるわけだが、例えば、足の親指の爪が伸びるのは正常な爪でも1カ月あたり約1.5ミリ(年齢や季節により異なる)。厚くなった爪は伸びが悪く、生えかわるまで1年以上かかる。

ちなみに、水虫菌がすみ着いていた皮膚が、新しい健康な皮膚に入れ替わるまで約1カ月程度だ。福田医師は「爪水虫が足の水虫よりも治りにくいのは、爪の伸びの遅さが関係していると考えられます」と指摘する。

新しい爪に生えかわるまでの爪の手入れは、家庭内感染を防ぐ意味で重要となる。では、具体的にどんな点に気を付けたらいいのだろうか。実は爪を切るのは、爪水虫を防ぐうえで大切だという。

爪を切るときは、新聞紙などを敷いて、その上で行う。また、爪と皮膚との間にたまった粉は感染源となりかねないので、終わったら、切った爪や粉が散らばらないよう丸めて捨てる。そうしないと、周辺に水虫菌をばらまくことになる。

爪水虫が治るまでの間は、他の人と爪切りややすりを共有しないほうがよいそうだ。

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しっかり治療をして治したら、再感染させないこと。そのための日常生活上の工夫は足の水虫と同じく、いかにして自分の爪に水虫菌をすみ着かせないか。靴の中の湿度を高めない工夫や、足のケアについては、こちらを参考にしてほしい(関連記事:【水虫】スリッパ・バスマット、家庭内感染の盲点)。

夏本番を迎え、海やプールでは裸足で楽しみたい季節。普段の生活でも素足にサンダルで外出する機会がある。残念ながら今年は間に合わないが、健康的な爪を取り戻すためにも、爪水虫は徹底的に治すことが大事だ。

(取材・文/佐賀 健)

埼玉医科大学総合医療センター皮膚科教授
福田知雄医師

1987年、慶應義塾大学医学部卒業、慶應義塾大学医学部皮膚科入局。国立東京第二病院皮膚科、杏林大学医学部皮膚科講師、東京医療センター皮膚科医長を経て2016年より現職。専門は皮膚真菌症、皮膚腫瘍。
東洋経済オンライン医療取材チーム 記者・ライター

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