惜しい!勉強熱心な人ほどハマる「読書の罠」 その「努力」が結果につながらない3つの理由

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5ページというのはやや極端かもしれませんが、念頭に置いておかなくてはならないのは、「過去に支払ったおカネより、これから過ごす時間の価値のほうが重要だ」ということでしょう。

無理して最初から最後まで、同じ力をかけて読む必要はないのです。

落とし穴その3:読み捨て御免

最後のパターンが、「読んだら読みっぱなし」というものです。

勉強熱心な方は、本を読み終わったら、その達成感を胸にしつつ「さあ、次の新しい本は何にしようか」と、気持ちは次に向かっていきます。大概は、未読の本がたくさんたまっている、いわゆる「積読状態」だから、仕方ないとも言えるでしょう。

しかし、まず確実にしておきたいのは、「一度読んだ本で得たことを、確実に残す」ということです。

その本から得たことは、いったい何だったのか? その本から引用できる文章があるとするならば、それは何か? 本を踏まえて自分が変えるべきポイントがあるとするならば、それは何か?

そういった「問い」を自分に問いかけ、自分なりに答えを出しておくことが何よりも重要です。

たとえば、私が教えているビジネススクールの場では、本当に大事な本は、「読書会形式」でお互いに感想や学び、疑問点などを語り合います。本を読む労力以上に、読んだ後工程のほうを大切にしているのです。

私たちの記憶は、残念ながらそれほど優秀ではありません。もし読書後の消化プロセスを怠ったならば、その本からの学びは1週間も経たずに抜け落ちていくのが関の山です。

勉強会はやや極端な例かもしれませんが、5分でも10分でもいいので、本を振り返る。そして確実に何かを残す。そんなことを繰り返すことが、読書から学びを蓄積していく秘訣です。

以上、3つの落とし穴をご紹介しましたが、最後に最も気をつけたいパターンを紹介しましょう。

それはこの3つの「合併症状」です。

つまり、「フィットしないベストセラーばかりを手に取り」「その本を最初から最後まで頑張って読み」「読んだ後はそのまま放置」というパターン……。お心当たりはないでしょうか?

もし、こういう読書を繰り返しているならば、「読んだ達成感」は確実に得られますが、「学び」は限りなく少ない読書ライフを送ることになるでしょう。

お心当たりのある方、ぜひお気をつけください。

荒木 博行 学びデザイン社長

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あらき ひろゆき / Hiroyuki Araki

住友商事、グロービス(経営大学院副研究科長)を経て、株式会社学びデザインを設立。フライヤーやNewsPicks、NOKIOOなどスタートアップ企業のアドバイザーとして関わるほか、絵本ナビの社外監査役、武蔵野大学で教員なども務める。『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』シリーズ(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『世界「倒産」図鑑』(日経BP)など著書多数。

 

 

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