一晩寝かせて考えた人のアイデアが洗練される訳 レム睡眠によって人の記憶の痕跡は活性化される

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レム睡眠に入る前、脳の深部では「PGO波」と呼ばれる脳波が出現する。この脳波は、 レム睡眠の名前の由来となった急速眼球運動(Rapid Eye Movement:REM)を引き起こす。両眼がシンクロしながら、左から右へ、右から左へと動くが、この動きが脳の両半球のコミュニケーションを促しているのではと考えられている。

このようにして脳は、縦横無尽、自由闊達に記憶の痕跡を活性化できるのだ。

厳格な指揮者である海馬が、どの記憶痕跡が脳内で活性化され、どの記憶痕跡が整理されるかを厳しく判断する深い睡眠中とは異なり、レム睡眠の間、記憶の指揮者は休憩をとる。海馬はただ、脳内の記憶痕跡が何の統制も受けることなく活性化される様子を傍観する。通常は同時に活性化されることのない記憶痕跡が一緒に登場し、混じり合うのも、海馬が休んでいるからこそだ。

レム睡眠中に私たちは、明快かつ合理的な思考パターンからは思いつきもしない、創造的な経験をする。レム睡眠なしには生まれなかっただろう思考の結びつきに、チャンスが与えられるのだ。そのことが、夢が往々にして、極端に支離滅裂で混乱している理由を説明するかもしれない。

「レム睡眠」が元素周期も蒸気機関も生んだ

深い睡眠時には新たに形成された記憶痕跡が固定されるのに対し、レム睡眠では、新鮮な記憶と過去の記憶との新たな組み合わせが生み出されていく。

翌日にはより優れた解決策が得られるかもしれないという思いから、物事やアイデアを「一晩寝かせよう」と言ったりするが、この表現には多くの真実が潜んでいる。

レム睡眠の創造的な世界は、人類の進化に大きなメリットをもたらした。たとえば、眠っているだけで、狩猟技術を向上させることができた。

レム睡眠中に、獲物に気づかれずに近づくための巧妙なアイデアを思いつき、それによって自身と家族の生き残りを確かなものにすることができた。洞穴や寝床をより安全に、より快適にするための決定的なひらめきもそうだ。「フェイスブック」の着想、「蒸気機関」の発明、「元素周期」の発見にもレム睡眠が一役買ったのではといわれている。

元素周期はロシア人化学者ドミトリ・メンデレーエフの夢に実際に現れたという。

1869年2月17日の日記に「夢の中で、すべての元素があるべきところに収まったシステムを見た。目覚めると同時に、すべてを紙に書き写した」と記されている。

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