「生成AIが仕事奪う」怖がる人に教えたい生存策6つ 変化する時代に求められる人間の「価値」とは?
答えが簡単に得られることで、批判的思考力が低下する懸念はありますが、一方でこれまでは興味があっても探究に向かえなかった多くの人々が、その世界に参加できるようになります。
探究は、研究者に代表されるような、物事の本質を仮説をもって探し究める行為です。AIは事前学習に基づく回答は得意ですが、懐疑的批判的思考から大胆な仮説を立てることは得意ではありません。
アインシュタインが物理学の常識を変えたように、これまでの学問の認識を変える研究や、新しい学問領域そのものを構築するような独創的な研究は、人間にしか生み出せない価値として残ります。
ただしこの領域も、研究活動は論理的思考の結晶であり、論文として言語化・公開されていて、かつ最適解を探すことはAIが得意なことから、AIによって自動化されていく可能性は大いにあります。
すでに、研究のすべての工程(仮説を立て、それらを検証するための実験を考案・実行し、実験結果を解釈し、新知識が見つかるまでこのサイクルを繰り返すという過程)を自動化することを目指す、オートメーションサイエンスという研究もあります。
例えばDNA配列解析や薬剤候補物質のスクリーニングなどで実用化しているラボラトリーオートメーション装置は、データ解析が自動化され、独自の科学的仮説も生み出され始めています。
創薬分野では治療薬の候補物質を探す研究でAIが活躍しています。研究領域の部分的な研究(材料やアプローチなどの前提条件を変えただけの研究)はかなり自動化され、より創造的な大きな仮説を新たに構築することが研究者の役割になっていくのではないでしょうか。
学問領域を横断的に俯瞰した思考は人間にしかできない
また、まったく違った学問領域を横断的に俯瞰した思考によって新しい洞察を得るというのも、人間にしかなかなかできない探究の領域です。
デヴィッド・ボームは、物理学者として量子力学や相対性理論において数々の顕著な業績を挙げています。彼は、光の波長が光の波動自体に意思があるかのように次第にそろい秩序が生まれてくる様子を、コヒーレンス(一貫性、可干渉性)と称して、その現象の類推から対話(Dialogue)という、まったく違う領域の「新しい世界と人々の共生の哲学」に展開させました。
例えば、AIによって人類のすべての人々が幸せになる適切な利用方法を考えるためには、AIについての専門的な技術知識だけでなく、倫理道徳、そして社会実装するための法律や政治に関する知識、各地域における文化的差異を考慮する知識など、複数の専門知識を総合的に統合して俯瞰する必要があります。
意欲を持った人が複数の学問領域の知識を効率的に収集し探究することにおいて、インプット収集の簡便化とアウトプット生成の一部自動化で人間を支援する生成AIは強力な武器になります。
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