「生成AIが仕事奪う」怖がる人に教えたい生存策6つ 変化する時代に求められる人間の「価値」とは?

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人間の身体の中から湧き出てくる感情、感覚、感性、心地よさなど、必ずしも言語化できない価値基準の相対的価値が高まります。AIの時代に必要なことはスキルの学び直しではなく、センスの磨き直しです。

そしてそれらの身体知を磨くために、身体との対話を日常的に行う運動やスポーツの役割が今後ますます見直されていくと思われます。具体的には、健康以外の目的で肉体を鍛えたり、音楽や舞踊と共に人間の身体美を極める人々が増えていきます。

かつて奴隷制度によって労働から解放された古代ギリシャ市民にとって、各種のスポーツが弁論術、音楽と並ぶ市民的教養の必須科目とされました。哲学者プラトンは青年期にはレスラーとして活躍し、プラトンというのは本名ではなく、その立派な体格から「幅広い」という意味のレスラーとしてのリングネームだったと言われています。

ソクラテスも戦役に何度も参戦した重装歩兵の歴戦の勇士であり、何よりソクラテスという名前は「健康な力」を意味します。

奴隷的な労働から解放されたとき、運動やスポーツを通じた人間本来の身体知を磨くことへの関心は今後ますます高まっていくと思われます。

2.睡眠モード→ゆとりと着想

資本主義の自由競争社会において長い間、私たちは能力主義(メリトクラシー/個人の努力と実績次第で社会的地位が向上し、生活が豊かになる)の下に、正に「寝る暇も惜しんで」勉強し、働いてきました。そして能力主義の組織は、データ分析、資料作成、議事録・報告書作成など「意味はあまりないと皆わかっているが取りあえずやっている」ブルシットワーク(クソどうでもいい仕事)を生み出してきました。

私はこれらのブルシットワークは生成AIによって効率化されていくと考えています。コロナ禍にリモートワークが一気に普及したように、世界で同時に業務改革が起き、会社に縛られた従来の形での労働時間は短縮していくでしょう。そして睡眠の重要性への理解が深まるに連れ、睡眠時間を確保する人は増加していくと考えられます。

睡眠中の脳の動きはAIでは模倣できない

また今後、AIでは模倣できない睡眠中の脳の働きについての研究が進むと思われます。脳には集中して活動を行うときのタスクポジティブネットワーク(TPN)と、ぼーっとしているときのデフォルトモードネットワーク(DMN)があります。

生成AIのアウトプットが論理性、正確性、網羅性において人間よりも優れるとわかった場合は、人間にとってはタスクポジティブネットワークでの仕事の効率よりも、デフォルトモードネットワークでのアイデアのひらめきのほうが重要になってきます。

会社で日中に頭脳明晰な論理展開を披露しても、きれいな資料を素早く作成しても、これまでのような高い評価を得られず、「それくらいのことは生成AIを使えばすぐにできそうだな……」と思われてしまうでしょう。

それよりも「明け方布団の中でふとキーワードを思いついたのですが」とか「夢の中で、新商品をこのように使っている家族の光景が浮かんできて」などの発言のほうが評価されるようになっていくかもしれません。

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