みずほ銀行が今、「住宅ローン」を削減する真意 成長したいなら、既存事業へのメスは不可避だ

拡大
縮小

海外でもスクラップ・アンド・ビルドが起こりそうだ。東南アジアではインドネシアの現地銀行「BTPN」を筆頭に、フルラインの商業銀行ビジネスを拡大。3年後には純益で500億円を底上げする。米州でもネット銀行の開業や、大手証券ジェフリーズへの追加出資を決めた。一方、国別に規制対応コストの重い欧州は、不採算事業の縮小や撤退が行われる公算だ。

次の一手に注目が集まるのは、今年度で現中計が終了する三菱UFJFGだ。

三菱UFJはAI駆使し新興企業と向き合う

同社が経営資源を投下する東南アジアは、タイのアユタヤ銀行やインドネシアのダナモン銀行が中心となり事業を展開している。焦点はタイの成長鈍化だ。コロナ禍前でも経済成長率は2〜3%程度で、現地政府は28年にも本格的な人口減少に転じると予測する。

三菱UFJFG幹部は「タイの成長は早晩頭打ちになる。周辺国にも積極的に出ていかないといけない」と危機感をにじませる。

アユタヤ銀行は22年、インドネシアとフィリピンの消費者金融会社を買収した。両国は家計債務の割合がタイより低く、消費者金融の浸透余地がまだあると踏んだ。周辺国をも巻き込んだM&Aを通じて、成長を持続できるかが問われる。

一方の国内は、23年度で店舗統廃合のメドがつく。以前から注力する大企業や富裕層向け資産運用に加えて、亀澤宏規社長が期待を寄せるのは、イスラエルのフィンテック企業との合弁「マーズ・グロース・キャピタル」だ。

20年末からシンガポールで活動し、スタートアップ企業向けに融資を展開。財務諸表を重視する旧来型の審査が難しい新興企業に対して、AI(人工知能)やビッグデータを駆使して与信判断を行う。「まだ2年半だが、かなり手応えがある」(亀澤社長)。

5月には日本のスタートアップ向けに融資するファンドの設立を決定した。融資先企業が成長を遂げれば、資金利益のほかIPO(新規株式公開)など投資銀行業務も期待できる。パイプラインも見えており、同社の事業ポートフォリオでの存在感が高まりそうだ。

低金利下での成長の種探しに奔走するメガバンク。縮小均衡からの脱却を図るべく、既存事業の構造改革は待ったなしだ。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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