みずほ銀行が今、「住宅ローン」を削減する真意 成長したいなら、既存事業へのメスは不可避だ

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住宅ローンの採算性の低さや減少基調にある残高は三井住友も同様だ。それでも同社がリテールの拡大を宣言した背景には、「三井住友カード」の存在がある。オリーブの旗振り役はカード部隊だ。

同社は設立当初から決済ブランドのビザと組み勢力を拡大。今や同業の三菱UFJニコスやみずほ系のUCカードを引き離し、クレジットカードは国内屈指の発行枚数や取扱高を誇る。

三井住友のリテール部門は、業務粗利益の4割をカードなどの決済事業が稼ぐ。オリーブは融資というより、むしろカード利用を促す仕掛けだ。「三井住友カードがあったから、オリーブを作れた」(太田純社長)。6月には、カルチュア・コンビニエンス・クラブのTポイントと共同で新たなポイントサービスを発表したが、これもカードの利用促進が念頭にある。

個人向け取引を原則デジタルへと移行(撮影:今井康一)

既存店舗は最少人員のストアへ鞍替え

「自分たちの強みを完全に理解している。打ち出し方がうまいな」。別のメガバンク幹部は舌を巻く。オリーブの利便性や勢いのある決済事業を前面に出す傍ら、リテール全体では経営資源を絞るためだ。

富裕層を除く個人取引は、原則オリーブに一本化。実店舗の統廃合は一巡したが、今後既存店舗は最低限の人員で運営する「ストア」へと鞍替えし、運営費用の抑制で年間約300億円もの経費削減効果を見込む。住宅ローンは引き続き非注力分野であり、リテール全体では合理化対象だ。

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