「古民家を自分でリノベした外国人」が語る醍醐味 ヨーロッパとはまるで違う日本でのリノベ体験

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しかし、年齢を重ねるごとに、日本人がマンションに住むことを好む理由がだんだんわかってきました。木造住宅は通常、室内外の温度が同じなので、全室を暖めるにはエアコンか床暖房が必要です。ヨーロッパではセントラルヒーティングで家の中を暖めますが、日本ではほとんどの部屋をエアコンで別々に暖め、トイレや浴室は全く暖めないのが普通です。慣れるまでがとても大変でした。

「空き家」をビジネスにする

私はビジネスを教える教授であり、人々にビジネスの立ち上げ方を教えているにもかかわらず、空き家をビジネスにすることは真面目に計画していませんでした。自分の好きな場所に、素敵な新しい家を作る、という興奮に流されていたのです。

しかし、これはベストな方策ではありませんでした。当初は、リノベは趣味の範疇くらいにしか考えていなかったのです。家を購入してしばらくしてから、私は家を貸すことにしたのですが、日本では家がどこにあるかによって、(特に観光客向けに)場所を貸すルールが異なります。

例えば、多くの場合は月単位でしか貸すことができませんが、京都では1日単位から貸すことが可能です。また、きちんとした仲介業者を見つければ、家のメンテナンスなども含めて任せることができます。

しかし、たとえビジネスアイデアが現実的だと思えたとしても、リノベ費用を含めた空き家への投資を回収できるまでに最低でも8年から10年はかかるのではないでしょうか。投資として考えるなら、もっと効率のいいものがあるはずです。

リノベには時間も費用もそれなりにかかりましたし、メンテナンスは大変ですが、私は日本の家での生活を本当に楽しんでいます。今は、東京の家に住み、京都の2つの家を貸しています。木造住宅には特別な雰囲気がありますし、近隣と密接なのも面白いと感じています。そして、この独特の魅力に気づいている外国人は私だけではないでしょう。

前回記事:「古民家購入→自分で改装」した外国人が見た現実

パリッサ・ハギリアン 上智大学教授(国際教養学部)

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Parissa Haghirian

オーストリア・グラーツ生まれ。ウィーン大学日本学部卒業。ウィーン経済大学国際ビジネス学部で博士号取得。2004年に来日し、九州産業大学で国際ビジネスを教え始める。2006年、上智大学に准教授として着任。現在は、上智大学国際教養学部教授(国際経営・経済学コース)として、日本の経営学、クロスカルチャー、経営戦略などをテーマに研究・教育活動を続けている。

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