世界最先端の銀行が「金融商品を売らない」理由 DXとビジネスモデル転換を実現したDBSの奇跡

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バンキングが組み込み型になるということは、銀行がつながる相手が顧客だけでなく、顧客が目的に向かう行動をとる相手である企業や組織にまで拡大することを意味する。したがって銀行は、これらの企業群と協働してエコシステムを形成することが必要になる。

エコシステムとはもともと生態系を意味する言葉だが、あるテーマなどで企業や組織がつながって集団を形成する際の企業・組織間の連携関係の全体を示すものだ。

3万人の「学童の昼食代問題」を解決

DBSでの代表的な事例としては、「POSBスマートバディ」というリテール分野でのプラットフォームが挙げられる。まずDBSはデザインシンキングの手法を使って、顧客の行動を観察することを通じて解決すべき問題を見つけ出すことに取り組んだ。そしてリテール部門は、ある問題を見出した。

それは学童を抱えている家庭では、毎朝子供に昼食費を渡すことが大きな悩みのタネとなっている、ということだった。シンガポールの家庭の多くは、日本のように子供に弁当を持たせるのではなくランチ代を渡す。しかし、共働きの家庭が多いため、親が朝の支度で忙しくしている間にお金を渡すのを忘れてしまったり、適当な現金の持ち合わせがないこと等が少なからずあった。

DBSが開発したソリューションであるPOSBスマートバディは、子供にウェアラブルデバイスを持たせ、それに昼食代をチャージしてキャッシュレスでランチを購入するというものだった。親は都度現金を準備する必要がなく、必要な時に自分の口座からそのデバイスに昼食代をチャージすればよい。DBSは、ソリューション実現のために、学校内や周辺の商店にキャッシュレス対応を働きかけ、3つの学校で18カ月間のパイロットを行った後に本格導入へと進んだ。そして現在では、3万人近い学童がウェアラブルデバイスを使っている。

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