子どもに「信頼される大人」の4つの話の聴き方 傾聴カウンセラー・辰由加さんに聞く
――明らかな嘘をつかれたり、「死にたい」と言われたりするなど、親として本当につらい場面もあると思うのですが、そういうときは、どのように聴けばいいのでしょう。
傾聴するときは、事柄よりも感情に焦点を当てることが大切です。たとえば、子どもが嘘をついたり大げさに話したりする場合は、最初から疑ってかかったり、「また嘘ついて!」と怒ったりしないで、「嘘を交えて話すほど、わかってほしいことがある」という嘘の裏側にある気持ちにフォーカスしてください。
言葉の裏側の気持ちに耳を傾ける
たとえば「友だちに棒で殴られて、たくさん血が出た」という話は嘘だったとしても、「それほどこわい思いをした」ということを伝えたいのかもしれません。まずは受けとめて、「そのとき、どんな気持ちだったの?」と、感情を拾っていきましょう。「悲しかったんだ」と言われたら、「悲しかったんだね」と同じ言葉を使って、同じトーンで返します。そうすると、子どものなかに「わかってもらえている」、「大切にしてもらっている」という安心感が芽生えてきます。同時に、鏡を見るように、自分の気持ちをはっきりと自分で認識できるようになり、そこから自分なりの答えを導き出せるようになっていくのです。
「消えちゃいたい」とか「死んじゃいたい」という言葉が出てきて、慌てることもありますよね。そのとき頭ごなしに「死んじゃダメ!」と言うと、子どもが感じたことを否定することになります。わかってほしいと思って話したのに、バツをつけられたらつらいですよね。今すぐ死のうとしているのでなければ、「死にたい」の裏側にある「死にたいほどつらい」という気持ちに耳を傾けてください。そして、「あなたがいなくなったらお母さんは悲しい」、「お母さんはあなたをものすごく愛しているよ」とまっすぐに伝えることが大事だと思います。ただ、食欲が落ちていたり、眠れていなかったりするときは、最寄りの心療内科へ相談に行くことをおすすめします。
――不登校やひきこもりなどで、子どもはもちろん、親もつらい気持ちを抱えてしまいますよね。
そうですね。でも学校へ行かないというのは、「安心領域として家を選んだ」ということ。家にいると傷つくことやヘコんでしまうことから逃げられる。そう思って、「ここにいよう」と本人が自己決定したわけです。すごい判断だと思いますよ。みんな行っている、お母さんお父さんも行ったほうがいいと思ってる。でも、自分を守るために「行かない」を選ぶ。これは、自分の命を大切にしているからできることだと思うんです。だから、家にいることを選んだ子どもにも、そんな「安心領域」をつくってあげられた自分にも、まずはマルをつけてほしいと思います。