子どもに「信頼される大人」の4つの話の聴き方 傾聴カウンセラー・辰由加さんに聞く

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――子どもの話をただ「聞く」のではなく「聴く」、つまり傾聴するために、具体的にはどのようにしたらいいのでしょう?

大前提として、子どもの気持ちが閉じていたり、「お母さんには話したくない!」と言ったりするような状況では、無理に聴こうと思わないことです。「話したくない」というのも大事な自己決定。カチンとくるかもしれないけれど、あくまでも主人公は子どもだと自分に言い聞かせて、「今は話したくないんだね」と受けとめましょう。そして、「どうして話してくれないの!」と問い詰めるのではなく、「何か飲む? あなたの好きなジュースもあるよ」など、ちょっとした一言で空気を切り替えてみてください。

「この人に話してみよう」と思ってもらえる関係性をつくるには、そんな小さな一歩をくり返していくしかありません。すこしずつ気持ちがほどけてきて、1分でも話をしてくれるようになったら、そのときが傾聴を始めるタイミングです。

傾聴の4つのポイント

傾聴には大事なポイントが4つあります。1つ目は、子どもにとって「安心安全な場」をつくるために、聴いた話は誰にも言わないと約束すること。もちろん、その約束はかならず守ります。

2つ目はジャッジやアドバイスをしないこと。どんな話が出てきても「子どものなかに答えがある」と信じましょう。自分で考えて話したことが却下されたり、「もっとこうすべきだよ」というアドバイスが返ってきたりすると、自分自身が否定されたように感じますよね。そうすると、その場はその子にとって「安心安全な場」ではなくなり、話したいことも話せなくなってしまいます。何はともあれ、まずはそのまま受けとめる。そのためには、親御さん自身の価値観を前面に出さず、後ろに置いておくことが大切です。

3つ目は、子どもに「共感」しながら聴くこと。共感というのは、自分の価値観を後ろに置いたまま、子ども本人の感情をいっしょに感じることです。似ているものに「同感」があります。同感は自分の価値観を前面に出した、「わかるわかる!」という聴き方です。こちらは本当に「わかっている」のかどうかはわかりませんし、わかった気になると、だんだん「私も同じだから、わかるよ」と自分を主役にして話したくなってくるので要注意です。

4つ目は、本人の「自己決定」を大事にすること。どんな小さなことであっても、子どもが何かを自分で決めたらバツをつけないで応援しましょう。また、何か問題が起きたときも、独断で「今から先生に言いに行くよ!」などと決めるのではなく、「あなたはどうしたいの?」とか「お母さんに何を手伝ってほしい?」などと本人に決断を委ねることが大切です。自己決定を重ねていくことで、子どもはすこしずつ自信をつけていくのです。

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