ロシアの「フローズン・アセット」は使えるのか 西側の預かり分「約43兆円」はウクライナへ?

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願いましては、フランスが710億ドル、日本が580億ドル、ドイツが550億ドル、アメリカが380億ドル、英国が260億ドル、などとなっている (出所:statista)。おそらくロシアは、この順番で西側諸国を「信用」していたのであろう。われらが日本銀行には、実に約8兆円ものロシア資金が保管されていることになる。

昨今、言われ始めているのは「このロシア資産をウクライナ復興に使ってしまえ!」という議論である。ウクライナはすでに戦争で甚大な被害を受け、人口の3分の1に当たる1300万人が国外に脱出している。

ウクライナ復興に必要な額は「4110億ドル以上」

世界銀行とウクライナ政府が、今年3月時点で推計した復興の必要額は4110億ドル。ウクライナのGDP(国内総生産)の2.6倍に相当する。しかもこれは、ロシアが占拠している地域や、先日のカホフカ・ダム決壊に伴う被害を含んでいない数字なのである。

6月21~22日にロンドンで行われた「ウクライナ復興会議」には、61カ国の政府関係者や企業、国際機関、市民団体などが参加した。EU(欧州連合)、英国、アメリカなどが相次いで財政支援や融資保証を表明したし、日本からは林芳正外相が参加して、「地雷対策やがれき除去、基礎インフラ整備」などの日本型協力を申し出ている。

各国ともに財政事情が厳しいのは同じ。さらに言えば、「ウクライナよりも国内でカネを使うべきだ!」という政治勢力はどこの国にもいる。だったら「復興資金はロシアに払わせろ!」という声が高まるのは無理もないことだ。

事実、5月に行われたG7広島サミットでは、共同宣言に伴う5本の個別声明のうちの1本として、「ウクライナに関するG7首脳声明」が取りまとめられている 。その中には、以下のような文言も入っている(外務省ホームページの仮訳から)。日本もまたG7議長国として、しっかりとこの問題には関与しているのである。以下を参照されたい。

8 損害の責任

我々は、ロシアがウクライナの長期的な再建の費用を支払うようにする我々の取組を続ける。・・・(中略)・・・我々は、ロシアによる侵略に関連して制裁を受けている個人及び団体の資産を特定し、制限し、凍結し、差し押さえ、適切な場合には、没収又ははく奪するために、我々の国内の枠組みの中で利用可能な措置を引き続き講じる。・・・(中略)・・・我々は、それぞれの法制度と整合的に、ロシア自身がウクライナにもたらした損害を支払うまで、我々の管轄下にあるロシアの国家が有する資産を、引き続き動かせないようにしておくことを再確認する。(下線は筆者)

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