広末涼子「不倫される妻」役が真骨頂であるワケ 騒動後の「らんまん」は真逆の病弱な母役で登場

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仕事も恋も思うがまま情熱的に生きる人物ではなく、仕事も結婚生活も支える側を演じる。ただし、この原作も映画も、妻の存在意義が尊重されている。最終的に、夫婦と愛人の3人は「書く」という行為を通して、同志のようになるのである。

広末演じる妻はその同志たる、とても理知的で魅力的な人物に見えた。原作の作者がこの妻の娘であり、母の存在意義を大切に描いているからこそ、この役がとてもよく見えるとも言えるわけだが、たとえどんなにいい役でも、演じる人物が拙かったら残念なことになる。もしかして、私生活と逆の役を演じたほうが、いい方向に出るのかもしれない。

広末のエネルギーを生かせる作品

広末涼子の良くも悪くも旺盛な生命力を、忍従する役で抑制することによって、それでもなお溢れ出るものがなんともいえない役の魅力になったのではないか。この役を、地味な日陰の身のように演じてしまったら、不幸で可哀想に見えてしまう危険性があるけれど、この妻は決して可哀想ではなく、かっこいいのだということを広末がみごとに体現したのではないか。

そういう意味では、『らんまん』における病弱な母も、一見、広末にそぐわないような役ながら、病弱だけど、人一倍、愛情の強い、子ども想いの最高の母として、役を光り輝かせることに、広末は成功したのである。彼女のエネルギーを生かせる作品がもっとあればよいのにと切に思う。

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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