ChatGPT台頭も「AIは人間を超えない」3つの理由 「知能」と「知性」を混同した議論がなされている

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ここで人工知能開発はどのように始まり、何に成功したのか、ごく簡単に振り返ってみたいと思います。

人工知能という言葉が初めて使用された学会が開かれたダートマス大学には記念碑があり、そこには「学習をはじめとする(人間の)知能/知性のさまざまな特徴を精確に記述することで、(人間の)知能/知性を模倣する機械を製作することが可能になる、という推論に基づいて進める」(筆者訳)と記されています。

知覚、記憶、推論などの人間の知能/知性を概念として復元・記述し、コンピューターが扱える形式言語でコード化し、データベース化すれば、優秀な人間の知能を人工的に機械に模倣させることができるのではないか――として始まった研究ということです。

元々、数理論理学から発想を得ているこの研究は、当初人間の知的活動の記号やルールを明らかにしプログラミングする「記号的AI」と呼ばれるアプローチでスタートしました。

例えば、機械翻訳というのは当初より期待されたアプリケーションでしたが、「人間の言葉は機械的に分解可能である」という仮説に基づいていました。しかし人間の知識を体系化するという課題は、想像以上に難題で、汎用型人工知能を開発する研究は1980年代には行き詰まり、1990年代には冬の時代を迎えました。

学習したデータから「次」を予測するAI

一方で、「非記号的AI」という脳神経科学に着想を得たアプローチも当初からありました。

人間の脳内にある神経細胞(ニューロン)をモデル化した「ニューラルネットワーク(Neural Network)」というアルゴリズムです。非記号的AIアプローチは、学習アルゴリズムを改良しつつ、21世紀に入ってコンピューターの演算速度が高速化したことで多層のニューラルネットによる機械学習、ディープラーニング(深層学習)が可能になり、一気に性能を高めることができるようになりました。

例えば統計的機械翻訳は、「機械に意味の理解は不可能である」という前提に立っています。意味を構造的に理解するのではなく、前後の文脈のみに注目して、「次に来そうな単語」を確率的に予測することに集中することで、自動翻訳は一気に精度を高めることができました。

そして同じ予測モデルを使った大規模言語モデルによって、AIもさらに別の段階に入りました。機械に人間の複雑な知能をトップダウンで学習させるのではなく、機械自体に大量のデータをボトムアップで学習させることで、一気に人工知能が進化してきたのです。

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