ChatGPT台頭も「AIは人間を超えない」3つの理由 「知能」と「知性」を混同した議論がなされている

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AIが台頭してきた現代において、人間の知能/知性とは何かが問われています(写真:Graphs/PIXTA)
ChatGPTをはじめとする生成AIの台頭していますが、先端技術の社会実装支援を行う投資・コンサルティング会社を経営する安川新一郎氏は、「AIの持つ“知能”と、人間の持つ“知性”を混同した議論がされている」と指摘します。それはどういうことなのか、安川氏が解説します。
※本稿は安川氏の新著『BRAIN WORKOUT ブレイン・ワークアウト 人工知能と共存するための人間知性』から一部抜粋・再構成したものです。

「知性」は人工的に実装できてはいない

「われわれ人間に何が残るのか?」

これは、OpenAIの創設に携わったイーロン・マスクが、GPT-4の性能を目の当たりにしたときの反応です。

生成AI(用語解説)が誕生したことによって、本当の知能/知性とは何かという論争が起きています。

※用語解説は外部配信先では閲覧できない場合があります。その場合は東洋経済オンライン内でお読みください

例えば「生成文法」の提唱などで知られ、「現代言語学の父」とも呼ばれるノーム・チョムスキー教授は、単なる予測モデルでしかできないChatGPTは批判的思考ができず、道徳的判断規準も持ち合わせていないと強く批判し、真の知性とは程遠い疑似科学であるとして、ChatGPTへの世間の熱狂に警戒感を示しました。

AIに対するこうした期待と警戒は、議論において知能と知性を混同しているから生まれるのではないかと思っています。ここで「知能」とは、明白な答えがある問いに対して、素早く適切な答えを導く能力、「知性」とは、明確な答えがない問いに対して、その答えを探究する能力とします。

人類は人工の「知能」の開発には成功しつつあるが、感情や「知性」を人工的に機械に実装することには、まったく成功していません。それにもかかわらず、片方は優秀な知能だと主張し、片方はまったく偽物の知性だと反論しているのではないかと思います。

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