「電気代が値上げがあまりに厳しい」根本的な原因 エネルギー市場では何が起こっているのか

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ちなみに、供給余力への制約は、脱炭素を目指した動きも関係しています。どういうことかといえば、近年は脱炭素化への取り組みを進めるためにも、化石燃料関連に対する新たな投資は手控えられる傾向にありました。

このようにして2021年以降はエネルギーの需給が逼迫し、石油、石炭、天然ガスなど、すべてのエネルギーの価格の高騰が同時多発的に発生したというわけです。

追い打ちとなったロシアによるウクライナ侵攻

そして、エネルギー価格の高騰は、以上のような供給余力の不足だけでは終わりませんでした。さらなる追い打ちが2022年に発生したロシアによるウクライナ侵攻で発生しました。

2022年2月に起きたロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、エネルギー価格の高騰は新たな局面を迎えました。

まず2022年3月に世界の指標原油のひとつ、ブレント原油の先物価格が瞬間風速で1バレル139ドルを突破。リーマンショック後の最高値を更新する異常事態が起きました。天然ガスやLNGの価格の高騰はもっと激しく、原油価格に換算すると1バレル600ドル近い価格を記録します。

さらに石炭も同様にスポット価格が400ドル/トン(一般炭)を記録するなど、化石燃料は軒並み暴騰していったのです。原油、天然ガスともに世界有数の輸出国であるロシアからの供給に支障や途絶が起き、国際市場の需給が逼迫するのではないかという憂慮から起きた現象でした。

さらに、欧米によるロシア産の石油や石炭の禁輸という経済制裁などが市場の混乱を深め、資源エネルギーがより重要性を高めることになる「安定的な供給」と「手頃な価格」の崩壊を進展させていったのです。

次ページLNGの供給不安は2022年で終わっていない?
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