「電気代が値上げがあまりに厳しい」根本的な原因 エネルギー市場では何が起こっているのか

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2023年初頭までの原油価格(WTI 先物価格終値の月平均値)
2020年以降の天然ガス価格(月平均値)
2020年以降の石炭価格(月平均値)

こうして石油価格は暴落しました。さらに石油だけではなく、アジアのLNGスポット価格は5ドル平均で推移していたのが、最安値となる1.75ドルを記録。石炭はオーストラリア産の価格(一般炭)が100ドル前後だったのが、20年の春頃には50ドルを割り込むまでに下落しました。石油、石炭、天然ガス、LNG、電力など、ありとあらゆるエネルギー価格は暴落し、史上最安値を記録する事態に至ったのです。

なかでも象徴的なのは、2020年4月20日に起きた出来事です。アメリカ産の原油の先物価格がマイナス37ドルになったのです。先物価格がマイナスになるということは、先物で原油を売る側が決済時にやむを得ずお金を払って原油を引き取ってもらうということです。買い手からすれば原油をもらいながら、お金ももらっていることになります。そこまで原油が供給過剰になるほどに、当時は需要が激減していました。

2020年5月、資源が〝ダブついている〟事態を受け、中東やロシアなどの産油国によって構成されるOPECプラスは史上最大規模の協調減産を開始します。供給過剰を解消して石油価格を適正水準に戻すための措置でした。

市場はしばらく波乱の様相が続きましたが、各国政府は企業支援などを推し進めることによって新型コロナウイルス禍からの経済立て直しを図りました。

やがて、少しずつエネルギー需要は回復していきます。産油国による生産調整も奏功したことで、原油価格は2021年6月には、2019年12月(新型コロナウイルスが流行する前)の1バレル60ドルを上回る、1バレル70ドルを超えるところまで戻りました。

高騰の原因はエネルギー市場全体の供給余力不足

しかし事態はそこに留まりませんでした。今度は逆に、「谷深ければ山高し」という投資の格言をなぞるように、石油をはじめとするすべてのエネルギー価格が、大きな下落から急反転して高騰し続けていったのです。

まず、石油は2021年10月に80ドルを超えるまでにアップ。天然ガスも同年末から急激に価格が上昇し、アジアのLNGスポット価格は30ドルまで急騰。石炭価格も同年11月60ドル台まで上がり、年末には80ドル台へと一気に上昇していきました。価格が一気に高騰した大きな原因はエネルギー市場全体の供給余力が不足していたためでした。

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