電力会社で不正が続発、「価格カルテル」の罪深さ 公取委が1000億円超の課徴金納付を命令した

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公正取引委員会の発表資料。1000億円超の課徴金納付命令のうち、約700億円は中国電力に対するものだった(編集部撮影)

近年、さまざまな不祥事が相次ぐ電力業界。直近では顧客情報の不正閲覧が明るみに出たが、ついに“本丸”である料金で、競争回避を図る違法行為にメスが入った。

公正取引委員会は3月30日、中部電力および販売子会社の中部電力ミライズ、中国電力、九州電力および販売子会社の九電みらいエナジーに対し、独占禁止法違反(不当な取引制限〈カルテル〉の禁止)に基づく排除措置命令および課徴金納付命令を下した。

電力小売り自由化以前に独占状態だった他社の販売エリアでの営業活動を自粛し、安値での販売をしないなどの合意をしていたとして、公取委は中部電、中部電ミライズ、中国電、九電の4社に対し、総額1010億円の課徴金納付を命じた。

その内訳は、中国電が約707億円、中部電が約201億円、中部電ミライズが約73億円、九州電が約27億円。課徴金総額の規模は過去最大だ。

他方、各社にカルテルを持ちかけたとみられる関西電力は、独禁法違反の内容を公取委に自主申告したことから「課徴金減免制度」(リーニエンシー)に基づく減免措置が適用され、排除措置命令および課徴金納付命令を免れた。

「相互不可侵協定のような違法行為」と指摘

公取委によれば、電力小売り全面自由化後の2017年11月ごろから、関電は原発の再稼働で生まれた電力の供給余力を活用すべく、名古屋市や岡山市など他電力のエリア内に営業所を新設し、販売活動を本格的に開始した。ターゲットとされたのは大規模工場やオフィスビルなどの特別高圧および中規模ビルなどの高圧と呼ばれる分野で、大口顧客を獲得すべく、安値での販売攻勢を仕掛けた。

ところが、販売競争は1年もたたずに沈静化した。関電の安値攻勢に他社が悲鳴を上げ、関電および他社との間で競争を自粛するための「相互不可侵協定のような違反行為が行われた」と公取委幹部は指摘。「情報交換」という名目で各社の代表取締役を含む幹部が会合や電話でのやり取りを重ね、2020年10月末~11月初めごろまでに他社のエリアでの営業活動をお互いに制限することで合意したという。

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