――公正取引委員会は3月30日、中国電力など6社に対し、独占禁止法に基づく排除措置命令および課徴金納付命令を出しました。公取委によれば、関西電力と中国電力、関西電力と九州電力、関西電力と中部電力ミライズなどの間で、お互いのエリアで安値での販売を手控える合意がなされ、電気料金の水準を上昇させていたといいます。
今回、カルテルが摘発されたのは西日本における大企業向けや官公庁入札など大口分野に限られている。カルテルが行われていた期間も2018年秋頃から2020年秋頃までの2年間とされている。
こうした大口分野の販売はすでに東日本大震災以前から自由化されていたが、競争があったのかというとそうではなかった。すでに過去において大手電力会社は自社のエリア外に進出しようと思えばできたにもかかわらず、その事例はほとんどなかった。
言い換えれば、自由化市場であるにもかかわらず、長きにわたって大手事業者間の競争自体がなかった。ところが、西日本では、関西電力のエリア外進出をきっかけに競争が起きてまもなくして、カルテルが結ばれた。暗黙の協調による市場分割状態から離れて、ある種の競争的な局面に入ろうとした時にカルテルによって押しとどめられたとも考えられる。
言い換えると、今回摘発されなかったエリアや分野のほうが、競争がなかったという点で深刻だった可能性すらある。実際は暗黙のうちに競争制限が行われており、お互いに証拠を残すような相談だとかメールのやりとりすら必要がなかったのかもしれない。
電力システム改革の細部の再検証が必要
――今回、1000億円を上回る課徴金納付命令が出されたことで、電力業界は襟を正して競争的な状況に移行するのでしょうか。
取り消し訴訟を起こすことを決めた電力会社も複数あり、最終的な決着には時間がかかるだろう。とはいえ、電力業界は独禁法違反行為について相当大きなリスクがあることを認識したはず。今後、コンプライアンス体制を整備することにより、同じような問題の再発防止は期待できる。
他方で、今回のカルテル摘発をきっかけとして、本格的な競争が起きるかは楽観できない。大手電力各社が、今よりも競争制限的な方向に行かないようにするための対策を政府はしっかりと考えていかなければならない。
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