「電気代が値上げがあまりに厳しい」根本的な原因 エネルギー市場では何が起こっているのか

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資源の生産国は需給の変化が起きたとき、できるだけ速やかに資源エネルギーの生産を増減する対応が求められる場合があります。需給が逼迫していれば資源エネルギーを増産し、反対に需給が緩んでいるときは生産量を減らすということです。しかし、新型コロナウイルス禍から需要が戻り、増加に転じていったときに、その急速な変化に対応できる力が市場には不足していました。

背景には、エネルギー市場で進んできた競争の激化があります。どのようなビジネスもそうでしょうが、競争に勝ち抜いていくためには無駄を省き、コストを下げていく必要があります。無駄な設備を抱えることは、コストの増加につながることから避けようとする動きが生まれます。

例えば製造工場でいえば、設備を常にフル稼働して生産している状態が理想です。エネルギー市場も同様です。石油や石炭、天然ガスなどの生産には、巨額の投資が必要であり、設備をフル稼働させることで利益を生み出せるようにコスト設計されています。逆に言えば、生産に必要のない設備を抱えていることは単に無駄になることを意味し、そうであれば削減してしまおうというのが供給側の合理的な判断となるのです。

エネルギー市場では長い時間をかけて、使わない設備や供給能力をできるだけ減らす「合理化」が進んでいました。その結果、エネルギー市場全体として供給余力も削減されていきました。

「合理化」が皮肉にも大きな足かせに

しかし、いざ新型コロナウイルス禍から需要が戻り増加に転じていった際には皮肉にもそれが大きな足かせとなったのです。すなわち、すべての資源エネルギーで供給力とその余力が不十分となり、供給が追いつかなくなりました。これには新型コロナウイルス禍でエネルギー価格が低迷したことによって、エネルギーへの投資が落ち込んだことも関係しています。

その結果、すべての資源エネルギーの市場で供給力が十分でない状況となりました。消費国は、「石油が高すぎるので天然ガスを増やそう」という代替措置も取れなくなり、一種の悪循環に陥ったのです。

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