アメリカが「プーチンの弱体化」に危機感抱くワケ アメリカ政府関係者が最も懸念していること
アメリカ政府関係者はロシアが保有する核兵器に特に注意を払っていた。地球の大部分を壊滅させる力を持った国が不安定になっている状況に戦々恐々としていたのだ。しかし、ある政府高官によると、アメリカ政府はロシアの兵器の配置の変化を検知しておらず、自国の核態勢の変更も行わなかった。
「事態がかなり速く進行しているため、最終的にどこに行き着くかは測りがたいが、アメリカにとっての2つの大きな問題は、核兵器に対する指揮統制、そしてさらなる領土奪還に向けたウクライナの努力への影響だ」。そう指摘するのは、ロシア専門家であるアメリカン大学のジェームズ・ゴールドガイアー教授(国際関係論)だ。
ロシアインテリジェンスのアナリストを長年務め、現在は新アメリカ安全保障センターに所属するアンドレア・ケンドール=テイラー氏は、ロシアの出来事に影響を与えるアメリカの能力は限られているため、暴力や混乱の波及を防ぐことに集中すべきだと指摘する。
「アメリカ政府は、アメリカやNATOはこの混乱につけ込もうとするだろうというロシア国内に深く根付いた被害妄想を刺激することを避けなければならない」と同氏は言う。「ロシアの過剰反応を防ぐためにも、将来的にロシアとの関係を安定化させる時が来るかもしれないという長期的な視点でも、それが重要だ」。
プーチンの地位が揺らいでいる証拠
アメリカの政府関係者の見方がどのようなものであれ、彼らはロシアの出来事をプーチンの地位が揺らいでいる証拠だと見なした。
アメリカ政府関係者は数カ月前から、ウクライナ戦争の管理をめぐるプリゴジンと国防省指導部の間のエスカレートする確執を監視してきた。そして、なぜプーチンはこのような公然の異議申し立てを容認しているのかという誰もが共有する疑問を抱きつつ、同大統領は自身の政治目的のためにそれを密かに促しているのではないかと推測していた。
しかし6月24日までに、ホワイトハウスや国家安全保障機関においては、プリゴジンがプーチンに大きな損害を与えたことについて疑いの余地はほとんどなくなっていた。かつてプーチン大統領の側近として2016年の大統領選挙への介入を指揮したプリゴジンは、プーチン大統領が掲げるウクライナ戦争の大義は偽りであると公然と主張した。この侵攻はウクライナとNATOがロシアに与えている脅威への正当な反応であるとの見解に異議を唱えたのだ。