ここで問題なのは、第三のポイントである。そのような、みせかけの追加緩和では、市場はネガティブに反応してしまうのではないか、ということだ。それなら、追加緩和をしない方がまだましだ。
「長期金利ターゲット」に追い込まれる日銀
つまり、これまで、黒田緩和は、常にサプライズをもたらしてきた。必要ない規模の緩和、予想できない、まともな思考ではあり得ない緩和を行ってきたから、株式市場や為替市場は、狂ったように反応した。狂喜乱舞した。そして、彼らは、刺激中毒になった。ギャンブル中毒と似て、大穴を当てないと、大きなサプライズでないと感じなくなっているのであり、それを期待しているのである。
この結果、このような追加緩和では、むしろ失望が大きくなり、ネガティブに反応することになる。「しけた緩和」を行ったということは、もはや派手な緩和は将来にもあり得ない、ということを意味するから。後は、追加緩和の可能性ゼロ、そうなるとせいぜい維持、いつかは緩和縮小、ということが、出口議論を封印していても、気分(投資家マインド)として出てきてしまう。
一方、追加緩和の可能性を示唆しつつ、動かなければ、将来の淡い期待は、少しずつの懐疑を生み出しながら、しかし、継続する。だから、市場に対する影響は、小型追加緩和なら、マイナスなのだ。
黒田緩和のサプライズ手法からすると、これは手段がないのと同じだ。手段として取り得ない。だから、追加緩和しないだろう。
しかし、実は、最終手段がないわけではない。例えば、BNPパリバの河野龍太郎氏が、「望ましくない手法」としながらも、「長期金利ターゲットに日銀は移行せざるを得ないところまで追い込まれるだろう」と危惧しながら、そう予想している。私もほぼ同じ考えだ。
長期金利ターゲットとは、通常の金融政策が短期金利をターゲットとする政策であるのに対し、ターゲット金利を短期(オーバーナイト)ではなく、長期金利にするものである。短期金利がゼロになっても、長期金利はプラスであり、これをさらに引き下げるためにターゲットしたらどうか、というものである。
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