遺伝性疾患だらけ「ミックス犬姉妹」背負った運命 人気犬種ランキング入りも、悪徳業者が絶えず

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現時点では発症自体を予防する方法はありませんが、交配する前に両親犬、また血統ラインの中に発症した犬がいないかどうか確認してから、慎重に繁殖をする必要があります。

PRAはトイ・プードルやミニチュア・ダックスフントに好発します。複数の遺伝子変異部位が見つかっていることから、遺伝性疾患だと考えられています。トイ・プードルには遺伝子検査が確立されていますが、検査結果がキャリア(異常遺伝子を持っているものの無症状)でも目に異常をきたしていないことから、遺伝性疾患に無頓着なブリーダーは「うちの繁殖犬は問題ない」と検査をせず、交配してしまいます。

例えば、キャリア同士を交配すると、4分の1の確率でアフェクテッド(将来的に失明する)の子犬が産まれます。今回のケースでは姉妹で発症していることから、確率的にアフェクテッドの親犬から引き継いだ可能性が高いと考えられます。発症を防ぐためにはPRA検査結果をもとに、問題のない組み合わせで交配する必要があるのです。

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの場合は、PRAに対する遺伝子検査がまだ確立されていないので、交配前に両親犬が発症していないか、また血統ラインの中に発症した犬がいないかどうか確認してから、慎重に繁殖をしなければなりません。

遺伝性白内障もキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルに好発している疾患です。若年齢で発症することもあります。目の水晶体がだんだんと白くなり、視力が低下していきます。発症を防ぐためには、同様に慎重に繁殖をしなければなりません。

健全なブリーダーは「人気があるから」という利益目的のために、ミックス犬を作出することはありません。

厳しい犬種基準を設ける欧米

前述したように、欧米においては1960年代から異種の純血種同士を交配したハイブリッド犬種の作出が始まりましたが、そこには厳しいスタンダード(犬種基準)を設け、遺伝性疾患など犬の健康状態を獣医師と共に注視し、将来的に高いクオリティをもった犬種として認定されることを目指して努力を続けています。

繁殖する両親犬の血筋に遺伝性疾患を発症した犬がいるかどうかを調べる、バックグラウンドチェックも確立されています。ハイブリッド犬種のドッグクラブがブリーダーの教育や管理を担い、悪質な繁殖を行うブリーダーを取り締まる動きもあります。産まれた子犬の譲渡先も明確です。

しかし、日本においては血統書もいらなければ、純血種よりも高額で譲渡されることもあるため、無計画な利益目的の繁殖がほとんど。遺伝性疾患に関心がなく、両親犬の健康面をチェックすることは稀で、純血種のように公認されたスタンダードがないため、ミックス犬の繁殖は何の制約もない無法地帯です。

ペットショップや犬猫ブリーダー直販サイトで誰もが簡単に入手することができ、人気が上昇するほど、金儲けに走る悪徳ブリーダーの格好のターゲットになっているのです。

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