前原誠司氏「自主防衛が主で、日米同盟は補完に」 「アメリカの抑止力」の後退に備えた対応を

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塩田:現在の日本の安全保障体制について、意識している問題点は。

前原:私は党の安全保障調査会長で、去年12月に出た安保3文書に対して、党としての考え方をまとめて岸田文雄首相に提言しました。われわれの提言と3文書はほとんど齟齬はないと思います。アメリカは本当に信頼できるのか。総理は答弁で「信頼している」と言わなければいけないし、私が聞かれても「信頼しています」と言い続けますが、腹の中では、アメリカは本当に日本を守ってくれるのか、常に考えておかなければいけない。

前原誠司(まえはらせいじ) 1962年京都市生まれ。京都大学法学部卒業。1993年衆議院総選挙に初当選。民主党代表、国土交通大臣、外務大臣、国家戦略担当大臣などを歴任。現在、国民民主党代表代行、党安全保障調査会長を務める(撮影:尾形文繁)

アメリカは民主主義国家ですから、何よりも国民の世論がどんな状況かを踏まえなければならない。今は日米安保が主ですが、時間をかけてでも「自国を守ることが主で、日米同盟は補完」という状況に持っていくことが大事です。日本が他国から攻められたとき、少しでも自分の国は自分で守れるようにする。その第一歩になっていることについて、私は3文書を評価するし、この方向性に進めていかなければいけない。

打撃力を持つことはけしからんと言う人がいますが、今まで何で抑止が働いていたか。日本にはやられたらやり返す打撃力がないにもかかわらず、日本本土に撃ってくることがなかったのは、アメリカの抑止力に恐れおののいているわけです。ですが、日本側はアメリカのコミットメントがない場合をどう捉えるかを考えなければならない。日米の環境をどうマネジメントしていくかは為政者の最大のテーマであり続けると私は思います。

「防衛費2%」はアメリカの意向

塩田:3文書の中身を見ますと、専守防衛、非核3原則、積極的平和主義を守りながら、かつ反撃能力を持つという方針で、内容に矛盾があるような印象もあります。一方で、防衛関連予算を対GDP(国内総生産)比で、従来の「1%以内」から 1.5%とか2%にすると唱えていますが、必要な防衛費を積み重ねていったらそうなるというのではなく、いきなり目標値として総額の数字がポーンと出てきたのでは、という感じもします。

前原:アメリカの意向ですね。陰に陽に「NATO(北大西洋条約機構)並みに2%に」と言ってきていると思います。その背景は、先に申し上げた「中国の軍事力増強によってアメリカ一国で守れなくなっている状況での共同対処の要求」でしょう。

国会議員30年の体験に基づくものですが、安全保障、外務の分野を担当してきて、かつてアメリカは、打撃能力について、「われわれが持っているのだから、日本は持つ必要ない」と言い続けていたのに、「持っていいよ」と言い出した。まさに時代の変化です。中国とアメリカとの差が相対的に縮まり、東アジアでは中国のほうが優勢になりつつある。

日本も打撃力を持ち、統合抑止に加わってほしい、具体的な装備の面での能力、あるいは情報収集などが必要で、その結果、2%に、ということだと思います。われわれもそれを納得をしています。アメリカがそういう認識を持ち、われわれも同意することになれば、それに向けて取り組まなければいけない。そういう状況だと思いますね。

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