前原誠司氏「自主防衛が主で、日米同盟は補完に」 「アメリカの抑止力」の後退に備えた対応を

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日本のサイバー上の脆弱性はひどい状況です。サイバー安全保障基本法などを作って体制を整備していくことが大事です。理念法ですが、元を断つことができるとか、常にパトロールができるとか、そういう点を憲法との関係などを含めて整理し、ちゃんとやることができると書いてあります。

今まではその入り口まで行っていなかったのです。警察官職務執行法に「警察比例の原則」というのがあります。相手が拳銃だったらこちらも拳銃で、相手が大砲になったらこちらも大砲で、対応できるという原則です。これの準用です。

日本は「ファイブ・アイズ」には入れない

塩田:サイバー安全保障基本法を作らなければ、と思うきっかけになる出来事があったのですか。

前原:それは3文書の提言の中にあります。ウクライナを見たら一目瞭然でしょう。

3文書をまとめるに当たって、ウクライナの戦争で、フェイクニュース、ディスインフォメーションも含めて、それが可視化された。

一番つらかったのは、アメリカの安保関係の知り合いから、サイバーについて、「アメリカがメジャーリーグとしたら、日本はマイナーリーグ。それも1Aだぞ。だから、日本とは情報共有はできない。『ファイブ・アイズ』(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国による機密情報共有の国際的枠組み)には入れない。日本に情報はないし、情報が筒抜けになる。そういうものは本当の同盟国の仲間に入れない」と言われたことです。

塩田:この法案の成否の見通しは。

前原:わが党だけでは人数の面で法案を提出できないので、各党に呼びかけたいと思います。見通しは、わからないです。自民党と公明党は3文書をまとめていますので、サイバー防衛について、理解は得られると思う。自民、公明、日本維新の会に呼びかける。立憲民主党は党内に左右両派がいるので、難しいかもしれませんが、呼びかけは行います。

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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