それでも「日経平均の上昇は危うい」と言える理由 海外投資家の実力は?暴騰の背景を再点検
世界の金融・経済環境も再点検しよう。金融政策については、最近2週間だけでも、ユーロ圏、カナダ、豪州で利上げが行われた。ユーロ圏では、昨年10~12月期、今年1~3月期と、実質経済成長率(前期比)が「景気後退の目安」とされる2四半期連続のマイナスとなった。それでも、根強いインフレを抑え込むため、景気をさらに押し下げ、株価には逆境となる政策が進行し続けている。
また、アメリカではFED(連銀)が、13~14日のFOMC(連邦公開市場委員会)でこそ利上げを見送ったものの、年末の政策金利予想値を0.5%幅引き上げた。アメリカの資金面では、経済全体の資金量を測るM2(現預金合計)の前年同月比は、昨年12月から直近の4月分(4.6%減)まで5カ月連続の減少だ。M2が前年同月比でマイナスとなるのは1960年1月以来初めてで、アメリカの景気や株価を締め上げていくだろう。
さらに中国でも、経済統計は4月以降、不振が目立つ。ゼロコロナ政策解除による景気押し上げが期待されたが、空振りに終わっている。確かに足元で中国は政策金利引き下げの姿勢を強めているが、景気悪化に歯止めがかかるかは心もとない。
こうした世界経済の悪化は、日本からの輸出に影を落としている。15日に公表された5月の貿易統計では、輸出数量は8カ月連続の前年同月比マイナスだ。
円安が外貨建て輸出の円換算値を膨らませていることで、輸出金額は増加してはいるが、5月の前年同月比はわずか0.6%増にすぎず、今後マイナス圏への転落もありえよう。
「円安だから輸出株中心に日本株は買いだ」などと楽観できる状況ではない。しかも、何とか増加している輸出金額でも、中国向けは6カ月連続の減少だ。中国と地理的・経済的に関係が深い日本への悪影響が強く懸念される事態で、「中国がダメだから日本株に資金が逃避する」などという主張は夢物語だろう。
「長期展望は悲観せず」も不変
ただ筆者は、長期的には日本株に悲観ではない。長期展望を丁寧に解説するのには一定の分量が必要だ。また、筆者の予想では株価上昇は、いったん株価が下振れしたあとになる。よって、こうした長期予想はまたあらためて解説しよう。ただし『週刊東洋経済』(6月17日号)の40ページではその背景に簡単に触れているので、お読みいただければ幸いだ。
また、筆者が主催しているセミナーの参加者の方々には「日経平均はいったん下落したあと、今年末までには再度3万円の大台を奪回すると見込むし、2024年はさらに株価が上がるだろう。日本株を購入するなら、株価がいったん下振れすることを覚悟しつつ、じっと現物株やファンドを持ち続ければよい」と解説している。
避けるべきなのは、今後日経平均が2万7000円程度に「下がってから」、怖くなって株式などを思いっきり売却してしまうことだ。逆に、この水準に近いところまで下がったら買い場だ」とも伝えている。
今回コラムでは冒頭でお叱りの声があると述べたが、それ以上に激励や応援のメッセージを多く賜り、うれしさで涙することもある。そうしたご厚意に甘えてはいけないと自身を戒めつつも、この場を借りて心より御礼申し上げたい。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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