BJ:雪が溶けて水になるのを眺めていると、この小さな奇跡に私は大きな衝撃を受けた。この身体があるかぎり、人間は何かを感じることができるんだ、と実感できた。
一切のものから遮断されて、感覚が封じ込められると、息が詰まってしまう。この瞬間に、もっとも効果的な治療を受けられたような気がした。
そんな風に感じるとは想像もしていなかった。何よりも衝撃的だったのは、雪だるまに触れただけっていうこと。
でもそれだけじゃなくて、私に明るい希望を与えてくれた。物事は皆変わるんだ。雪は水になる。変化するからこそ美しい。
いつしか消えてなくなる。その瞬間、この不思議な環境にいることがすばらしいと感じられた。世の中から切り離されてなんかいない、自分は世の中に存在しているんだ、っていう強い衝動が湧いてきた。
もしアドバイスを求められたら
ティム:医者あるいはいい先輩として、あなたとすごくよく似たケガを負った人の相談に乗ってほしい、と言われたら、どんな風に話しかける? どんなものを見たり読んだりすることをすすめますか?
BJ:何か助言をしなければならない、という立場に置かれたら、きっと困惑していただろうと思う。本当に必要なのは、そういうことじゃないから。
仲間意識を持つことと、実体験を証言することが大切なんだ。君の質問に答えると、疑問を解決するために私のことを利用してもらいたい、と思っている。
誰かの元を訪れるっていうことは、そこに行くこと自体が目的なんだ。その人のそばにいて、この厄介な身体を持っているという気持ちを共有することが、いちばん大切なんだと思う。
(ティムから)死の淵に立たされたホスピスの患者にとって、自分の存在意義、みたいな壮大なスケールの話をすることが必ずしも効果があるとは限らない。
意外なことに、一緒にクッキーを焼くのも効果的な治療法の1つだ。
BJ:クッキーの香りは、純粋な喜びを引き出す。最高にステキな香りだ。
生きていること、そして今この瞬間に存在していることに対するご褒美。クッキーの香りを味わうことは、今この瞬間にしか得られないすばらしいものなんだ。ほかのもので代わりができない。
芸術にも同じことが言える。芸術はそれ自体に喜びが感じられる。音楽もダンスもそう。
芸術が私たちの心を打つのは、特別な目的があるわけではなく、ただ意味のない世界とそのすばらしさを喜ぶことができるからだ。
死ぬまで生きるには、こういったささいな瞬間を大切にする、ということも1つの方法なんだ。
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