韓国人騒然「福島原発の処理水放出」で大揺れ 寿司屋は閑散、影響を巡って与野党も対立

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韓国政府はケイ海明駐韓中国大使の発言を内政干渉だとして「度を超している」と反駁。保守・進歩系問わずメディアも批判したが、尹錫悦大統領自らも「国民が不快に思っている」と言及し、中国政府に適切な処置を求めたことで波紋はさらに広がっている。

与・野党では混迷が続いているが、韓国の人々の不安が如実に現れたのは6月15日、韓国日報と読売新聞が共同で行った世論調査結果だ。韓国では処理水放出に反対という人が84%にのぼり、賛成はわずか12%だった。それに対し日本では賛成が60%、反対が30%という結果が出ている。

政府は処理水放出のブリーフィングを開始

韓国では2008年、李明博政権時にアメリカ産牛肉を輸入するとした際、ひと月以上に渡る大きな反対デモが繰り広げられた。韓国のテレビが狂牛病に冒されたアメリカ牛の動画を放映するなどして不安が広がったためだったが、今回はその時のように市民も参加した大きな反対デモの動きはない。野党の処理水海洋放出を巡る動きは暴走だと見る人も多いが、消費に影響していることや世論調査の結果を見ても不安が広がっていることがわかる。

韓国政府は、こうした動きを受けて、15日からは今後、毎日、処理水放出についてのブリーフィングを行うことを発表した。15日の説明では科学的データに基づき、処理水の安全性を説明していたが、「安全性が検証されない処理水の放出には反対」という立場は固持している。一方、野党は、政権のブリーフィングに対し、市民と専門家らへ政府へ質問できる場所を別途設けることを検討していることが伝えられている。

また、韓国の国際法学者を含め一部国家では、放出の暫定処置を求める訴訟を国際海洋法裁判所に提出する動きが出ている。もし、暫定処置が認められれば、2〜3年は保留される見込みといわれている。ただ、この仮処分が認められる可能性はかなり低いというのが大方の見方だ。

日本では、事故が起きた福島という「地域」の問題ととらえているような雰囲気を感じるが、これは、韓国も含め、関係諸国にとっては国際問題でもある。韓国野党の動きは科学的根拠を無視しており、その主張には同意できないが、それでも、人々が漠然と不安に思う気持ちは十分にわかる。日本政府はそうした安全性の説明について、IAEAの分析結果だけではなく、国内外に向けて日本独自の何らかの発信が必要なのではないだろうか。

菅野 朋子 ノンフィクションライター

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かんの ともこ / Tomoko Kanno

1963年生まれ。中央大学卒業。出版社勤務、『週刊文春』の記者を経て、現在フリー。ソウル在住。主な著書に『好きになってはいけない国』(文藝春秋)、『韓国窃盗ビジネスを追え』(新潮社)がある。

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